ここまでは既にプロで活躍している選手を紹介してきたが、大学で順調にステップアップしている選手も存在している。その筆頭候補と言えるのが2021年夏に智弁和歌山を優勝に導いた中西聖輝(青山学院大)だ。2年まではリーグ戦での登板機会は少なかったが、常広羽也斗(広島)、下村海翔(阪神)の抜けた昨年はエース格へと成長。春は7試合に登板して2勝0敗、秋は8試合に登板して6勝0敗という見事な成績を残し、チームの大学四冠にも大きく貢献した。安定感は大学球界でもトップクラスであり、今年のドラフトでリストアップしている球団も多いだろう。

 こうして見ると“甲子園優勝投手はプロで大成しない”というジンクスは当てはまらないケースが多いように見える。今回取り上げた以外にもまだ今後のプロ入りが狙える選手も多いだけに、今後さらに野球界を席巻する甲子園優勝投手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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