巨人から人的補償でソフトバンクに移籍した伊藤優輔
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 国内FA権を行使してソフトバンクから巨人に移籍した甲斐拓也の人的補償で、28歳右腕の伊藤優輔が巨人からソフトバンクに移籍することが1月16日に両球団から発表された。

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 伊藤は今年がプロ5年目の右腕でプロ未勝利。この成績だけを見れば、1軍での活躍には懐疑的になるが、投球を見ればイメージがガラッと変わる。他球団の編成担当は「ファームで投球を見ていましたが格が違う。1軍で十分に活躍できる能力は備えています。パワー系の投手スタイルは、2023年ドラフト1位右腕の西舘勇陽、昨年救援で奮闘した平内龍太と重なる。プロテクト枠から漏れていたら、獲りにいくのは当然でしょう。故障で投げられない時期が長かったですから、プロテクトされなかったのは仕方ないですが、巨人もリストから外すのは断腸の思いだったと思います。ソフトバンクはいい投手を獲りましたね」と高い評価を口にする。

 伊藤は都立小山台高、中央大、三菱パワーを経て、20年ドラフト4位で巨人に入団。最速156キロの直球、140キロ台中盤のカットボールを武器に即戦力として期待されたが、新人の21年に右肘痛を発症して、トミー・ジョン手術を受けて育成契約になった。リハビリに打ち込み、23年に実戦復帰すると、昨年はファームで40試合登板、4勝0敗14セーブ、防御率1.29をマーク。7月下旬に1軍に上がると、同月30日の阪神戦(甲子園)で1軍デビュー。8試合登板で1ホールド、防御率1.04と大きな可能性を抱かせた。

 対戦した他球団の打者が振り返る。

「コンパクトな腕の振りから150キロ以上の直球を投げてくるので差し込まれる。直球以上に厄介だったのがカットボールですね。途中まで直球と見間違う速さから手元で曲がるので芯を外される。力で押し込む投手ですけど、打たせて取るタイプかなと感じました」

 巨人は、昨年最多勝に輝いた菅野智之が海外FA権を行使しオリオールズに移籍。先発で24試合登板して156回2/3を投げ、15勝を挙げた穴は簡単に埋まらない。伊藤は中大の先輩でもある阿部慎之助監督から先発に配置転換させることを告げられていた。この事実だけでも、期待値の大きさを物語っている。巨人にとって痛い補償となったはずだ。

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