2001年の「年頭視閲式」(警察官の士気を高めるために年初に開く式典)で分列行進をする、戸部警察署地域課長時代の寺﨑さん(前から2番目)。これ以降の写真は、基本的にズボン姿で写っているという

かつてのセクハラ上司が放った衝撃発言

「私が『そんなことしたら捕まえますからね』と食ってかかると、『そんな生意気なこと言うやつ初めてだぞ』なんて言われました。まだハラスメントという言葉すら存在しなくて、『子どもが産まれたら仕事やめろよ』などと平気な顔で言われた時代でした」

 女性警察官にとって長らく「当たり前」だったスカートだが、寺﨑さんは自身の制服姿の写真を見返す中で、2001年を境にズボンに変わっていることに気がついた。明確なきっかけがあったわけではないが、交番配属の女性警察官が増えはじめた時期だったこともあり、組織全体で「ズボンのほうが働きやすい」という意識に変わっていったのではないかとみている。

 時代とともに、女性警察官の活躍の幅は格段に広がった。しかし寺﨑さんのもとには、今なお、後輩の女性たちからSOSの声が届くという。

「数十年前にできた警察署も少なくないので、女性用のトイレやシャワー室がなかったり、もはや休憩室すらなくて更衣室で仮眠したりしている状況があります。施設面ではまだまだ女性への配慮が遅れていて、“男社会”が抜けていないなと感じますね」

 1999年、かつての「婦警」という呼称は、男女雇用機会均等法の改正に伴い、「女性警察官」に改められた。それから四半世紀たった今、制服のスカート支給廃止に踏み切る動きが出てきた。「昔は警察署に女性用トイレがなかったらしい」と驚かれる時代も来るはず……そう信じたいものだ。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼