じろじろ見てくる人はいなかった

 就職先は、国内の有名なテーマパーク。ダンスを生かす仕事だったが、衣装を汚さないようにするため、メイク禁止がルールだった。

 知らない人の前にすっぴんで登場するのは、「赤ピーマン」とからかわれた小学校以来になる。つらく感じて悩んだが、最後は心を決めた。

 出社初日。小学校のときとは、違う光景があった。

 誰も、何も言ってこない。じろじろ見てくる人もいない。RICACOさんには、ただの新人として接してくる。

「大人の対応というのか、大人の世界ってこんなに違うんだと。傷つけられることが一度もないですし。私が気にしているほど、私のことをかわいそうなんて、誰も思っていないんだなって、また気づかされたんです」

SNSにすっぴん写真を投稿

 RICACOさんはさらに踏み込んだ。2016年、22歳の時、SNSに自分のすっぴんの顔写真を投稿し、あざのある自分自身をさらけ出した。

「格好いいよ」

 反響の大半がそんなポジティブなコメントで、有名な芸能人からも届いた。

「ありのままでいいんだって、やっと自信が持てました」

SNSを通じて資生堂からオファーが届き、2022年にCM出演を果たした。「自分らしい美しさ」がテーマのCMだった。あざのおかげで夢がかなったと、また自信がついた。

「昔は、カバーメイクが剥げたときにすごく気にしたり、周りからどう思われているだろうって、そんなことばかりにとらわれていましたけど、今はあざを誇りにすら思えます」

RICACOさんはすっぴんでありのままを生き、あざについて積極的に発信を続けている。だが、特に思春期の当事者にとっては、それが簡単ではないことも理解している。

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子どもたちにどう伝えるか