書類審査で落ちたら「あざのせい」
両親は、あざに対してマイナスな言葉を一切使わなかった。
「あざがあって何が悪いん?」
「かわいいやんか」
母はいつもそんなことを口にしたが、当のRICACOさんは自分を受け入れられない。
ミュージカルのオーディションの書類審査で落選すると、あざのせいだと思い込むようになった。ダンスには自信がついていたからだ。
友達たちと写真を撮るときも、あざがない顔の右側を正面にしたり、学区外に出るときはじろじろ見られるのが嫌で、長い髪で顔の左側を隠したりもした。
「なんでこんな顔に産んだんや!」
母に泣きながら訴えたことも、何度かあった。
カバーメイクで「みんなと同じ顔になれた」
RICACOさんにとって、ひとつの転機になったのが、あざや傷痕を隠すための「カバーメイク」との出合いだった。
カバーメイクを学ぶ講座に出向いてメイクを施すと、あざがきれいに隠れた。
その日の家への帰り道は、いつもと違う風景だった。
「いつも、すれ違う人がみんな私の顔をちらっと見たり、小さい子からは『赤いね』って言われたりするのが普通だったんですが、誰も見てこないし何も言われない。『やっとみんなと同じになれた!』って、めっちゃうれしかったですね」
だが、今振り返ればの話だが「みんなと同じになれた世界」も、本当の意味で安らげる空間ではなかったようだ。