生まれつき、顔に大きな赤いあざを持つ30歳の女性がいる。幼少期は「なんでこんな顔に産んだんや!」と母親に泣いて訴え、思春期はカバーメイクであざを隠して過ごした。だが、今はありのままのすっぴんで人生を楽しんでいる。彼女に何が起き、何が変わったのか。
【写真】子どもの頃「赤ピーマン!」と呼ばれたことも…RICACOさんのしなやかなまなざし
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強い子どもだったと思う
「ごめんなー、おばちゃんがこの子を抱っこしたまま転んでしまってな。痛そうやろ? だから優しくしてなー」
この子、なんで顔が赤いの? そんなことを無邪気に聞いてきた保育園の子どもたちに、けがをしたんだと笑いながら話す母。
女性が今も覚えている、幼少期の一コマだ。
大阪出身で、地元でダンス教室を主宰しているダンサーで振付師のRICACOさんは、単純性血管腫という病気で、生まれつき顔の左半分に大きな赤いあざがある。
「3歳くらいのころには、『なんで私だけ赤いの?』って親に聞いていたみたいです」
今と違い、「多様性」などという概念はあまり浸透していなかった時代。
「おい、赤ピーマン!」
小学校低学年のころには、男子からそんなふうにからかわれることもあった。
運動神経抜群で、クラスで一番足が速かったRICACOさん。悪口を言った男子を追いかけまわして捕まえ、口げんかでも圧倒した。
「強い子どもだったと思います。みんなに勝てると思っていましたから。いじめられたと感じたことは一度もありませんでした」
RICACOさんは、笑いながら当時を振り返る。
私はあざがあるから、恋とか無理やな
将来はダンスの先生やミュージカルダンサーになりたいと、ミュージカルスタジオに入り、夢中で練習した。
だが、だんだんと心は“大人”になっていく。
高学年になったころ、男子を異性として意識するようになり、好きな男子もできた。女の子たちとの会話でも、そんな恋話がよく持ち上がるようになった。
相手がいれば強がればいい。でも、一人になったとき、自分自身には本音は隠せなかった。
「私はあざがあるから、恋とかって無理なんやろなって。一人になるとずっとそんなことを考えていました。誰を好きかなんて、言えませんでしたよね」