24年4月に、石川県の穴水町と能登町を訪れた両陛下は犠牲者が出た場所に向かって深く頭を垂れ、祈りを捧げた=2024年4月12日、石川県、東川哲也撮影(朝日新聞出版/JMPA)

 一般的に、行事などに皇族方が臨席する場合は、主催者や自治体から宮内庁に「お出まし」をお願いして実現するケースが少なくない。

 佐藤さんら大会実行委は大会が開かれるこの地に、愛子さまに足を運んでいただけないかと考えた。

「七尾市、特に和倉温泉は、この地域の経済の中心であるにもかかわらず、インフラの復旧が他の地域よりも遅れていたことも影響し、まだ皇室の被災地訪問が実現していない場所でした」(佐藤さん)

 もし愛子さまが訪れてくれたら地元の励みになる。そう考えた実行委は、いったんは「お出まし」の申請を準備し始めたが、最終的には「かえってご負担になってはいけない」と思い直し、申請を見送ることにしていた。

 にもかかわらず、愛子さまが大会を観戦するという連絡があったため、驚いたのだ。

「自治体や宮内庁の配慮だったのか、それとも愛子さまサイドが見つけてくださったのかはわかりません。しかし、内親王の訪問は土地の人たちをどれほど勇気づけることかとありがたかった」(佐藤さん)
 

佐藤直子さんら能登和倉国際女子テニス大会の実行委は、クラウドファンディングで開催資金を募った。会場近くの道路も地震で地盤が崩れている=「能登半島地震復興支援!能登和倉国際女子オープンテニス READYFOR」のウェブサイトより

「こんなときにテニス大会なんて…」

 災害関連死もふくめ、約500人の死者を出した能登半島地震。七尾市の和倉温泉も大きな被害を受け、温泉街を代表する老舗旅館「加賀屋」をはじめとする22軒の宿泊施設が全て休業に追い込まれた。

 毎年秋に開催されていた「能登和倉国際女子オープンテニス」大会は、会場となっていた七尾市和倉温泉運動公園の半数のテニスコートに被害があったものの、大会で使う予定だった6面のコートは無事だった。

「そうはいっても、能登半島が大変な時にテニスの大会を開いていいのだろうか。私も大会を運営するメンバーも迷っていました」

 佐藤さんは、3月からボランティアとして被災地に入り、4月には大会のアンバサダーを務める女優の南野陽子さんと一緒に避難所となっている体育館などを回った。

 そして、大会実行委のメンバーたちと、開催すべきかどうか話し合う場が持たれた。
 

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