時間がかかりすぎる離婚裁判への素朴な疑問 心と体が得する話

 一九九九年の全国の離婚件数は、約二十五万件。前年より七千件以上増えて過去最高となった。当事者同士の話し合いで離婚が決まるケースは九〇%ある。

 だが離婚に合意していても、親権や慰謝料などが折り合わず、調停・裁判に持ち込まれた場合、裁判所の都合でよけいに時間がかかることもある。

 慰謝料でもめ、裁判まで進んだ都内の女性は、離婚まで四年かかった。

 「その間、夫から生活費ももらえず、弁護士費用も不安でした。離婚までは児童福祉手当ももらえません。夫の扶養家族のままだったので、働いても控除や手当も受けられませんでした。二カ月以上も調停の間があいたこともあります。ますます不安になりましたね」

 また、都内のある三十代の男性会社員も言う。

 「離婚さえ成立すれば面会権を主張できるが、係争中では子供に会えず、つらい思いをしました。それに、離婚するまで妻の生活費も払わないといけない。経済的にも厳しかった」

 円より子参議院議員が代表の「現代家族問題研究所」にも、

 「調停や裁判が長引くストレスから、つい子供につらく当たってしまう」

 といった相談が多く寄せられている。

 家裁での調停委員を交えた調停も長引けば二年以上、それも不調で裁判まで進むと、さらに一、二年。最高裁までもつれ、五年以上かかる例もあった。

 「お互いの頭を冷やす期間も大切なので、早く終わるのがいいとは言い切れない。だが、まず調停を申請しても、期日がなかなか決まらないのが、長引かせる大きな原因です。川崎支部で三カ月も待たされたケースもありました」

 と、離婚問題を多く手がける田中早苗弁護士。

 なぜ、そんなに時間がかかるのか。横浜家裁川崎支部の場合、調停室が九つある。しかし、多い日だと三十件もある調停をこなさなくてはならず、空いている会議室や法廷を使うこともしばしば。調停委員は六十五人。弁護士や国から任命された民間人だが、国が定数を決めており、増やすことはできない。

 「川崎支部で決着した離婚調停は昨年度、五百五十二件。十年前より五割以上も増えた。これで精いっぱいです」

 と横浜家裁は説明する。

 田中弁護士は言う。

 「調停には裁判所が指定する担当裁判官がつくけれど、担当の曜日が決まっており、その日にしか期日を組めない。その条件で双方の都合をつけるので、長引くのは当然。担当の曜日制をやめて、毎日全員の裁判官に来てもらえたらと思います。一日のなかで時間を決めて担当してくれたら、曜日の問題はなくなる」

 だが、調停室や委員、裁判官の数が、増加する件数に追いつかない現状がある。最高裁広報課は、

 「庁舎の増改築では、十分な調停室を確保できるよう努めています。期日の入れ方の工夫だけで調停、裁判が早まるとは思えません。当事者や弁護士の都合で延びることも多いんです」

次のページ