『大ピンチずかん』の鈴木さんも言うように、子どものピンチと違って、大人がピンチを乗り越えると、それはむしろ勲章に。今回もあちこちから大ピンチ話が集まってきた。まず知り合いの編集者のテレワーク時の大ピンチはこんな感じ。

「画面共有あるじゃないですか。あれで資料を見せたんですよ」

 そこまではうまくいったのだが、自分のデスクトップの画面を会議のメンバーに共有したまま、解除するのを忘れてしまったのが運のツキ。

「外部の人にメッセージしたり、関係ない調べ物をしたり。会議に参加していないのがもろバレでした」

 オンライン会議は、あるあるネタの宝庫。こんな50代女性の大ピンチも聞いた。

「パジャマがカメラに映るとかよく聞きますけど、私の場合は、超ミニのホットパンツでうっかり立ち上がり、取引先のおじさんたちを悩殺してしまいました」

■レジでチューチュートレイン状態

 さらに、コンビニでパートをしている友人によれば、中高年のお客さんのバーコード決済が始まると、レジ店員のピンチの合図だ。

「オンラインにならずチャージできなかったり、スマホが突然聞いてくるパスワードを忘れていたり。人が足りないときは、お客さんの列が長くなり、Choo Choo TRAIN(チューチュートレイン)のダンスのように順番にレジをのぞいている。レジにいるほうはほんと冷や汗ものですよ」

 最後に近所の高齢者に聞いた。フルーツポンチの入った瓶のふたが、どうやっても開かない。温めてもダメ、たたいてもダメ。もう割れてもいいと金づちでふたを思い切りたたいてから、全身全霊の力を込めてラストチャレンジ。

「キュッとふたが動いて喜んだのもつかの間、力を入れようと瓶を真横にしていたので中身を床に全部ぶちまけてしまった。待ってー」

 神様は万人のうえに平等に大ピンチを授けてくださる。大丈夫だよのメッセージが必要な子どもと違って、大人はピンチへの耐性が強くなり、ピンチを恐れず厚かましくなるという落とし穴もありそうだ。大ピンチマウントもほどほどに。自分がね。

(ライター・福光恵)

AERA 2023年4月17日号より抜粋