本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 サンフラワーさん。大変ですね。夫は「6年前から既婚者アプリに登録して女遊びをしていた」ということは、結婚10年目ですから、結婚4年目からなんですね。ひどいですね。「今回は本気で好きだから別れられない」という言い方もひどいし、「家族としては大切だし夫婦としてはこれからも一緒に暮らしていける」という言い方も、本当にひどいと思います。

 でも、サンフラワーさんは、「正直夫の事は嫌いになった訳でもない」のですね。でも、「自身に至らぬ部分があったと反省」する必要はないと思いますよ。だって、悪いのは夫なんですから。

 さて、「自分の幸せというのが今の私には明確に見えてこなくて」というサンフラワーさんの文章は、とても重要だと思います。

「自分の幸せ」をサンフラワーさんは考える必要があると僕も思っています。

 ただし、「子供も大事だけど自分の幸せも考えた方がいい」という意味ではありません。

 この言い方は、「子供を大事にする」ことと「自分の幸せ」は対立するものだという前提があるように感じます。「子供を大事」にしながら「自分の幸せ」を追究する方法はないのでしょうか。

 サンフラワーさんが考える「子供を大事にする」ということは、どういうことですか?

「とにかく離婚しない」こと? それとも、「経済的に充分なサポートができる」こと? それとも、「夫婦円満で子供に接する」こと?

 普段だと、こんなことを厳密に考える必要はないでしょう。「離婚しないで、経済的にサポートして、夫婦で楽しく面倒みる」なんてことを、なんとなく感じていればいいのだと思います。

 でも、今は非常事態です。非常事態では、普段考えないことを、ひとつひとつ、はっきりとさせる必要があると僕は思っています。今までの感じ方や考え方ではやっていけなくなっているので、ぼんやりと思っていたことを、明確にする必要があるということです。そうして、暗闇の中に光を見つけるのです。

 さて、サンフラワーさん。「子供を大事にする」ことで、前述した三つのうちで、順番をつけるとすると、一番大切なことは何ですか?

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