2000年オフ、日本人選手に初めて代理人交渉を認めることが、11月2日の12球団オーナー会議で了承された。だが、かねてから反対の立場だった渡辺オーナーは「巨人にそんなくだらない代理人を連れてくるヤツはいないだろう。代理人を連れてきたら、年俸を2000、3000万円カットする。嫌なら自由契約。よそへ行けばいい。5000、6000万円乗っかると思ったら大間違い」と放言。これに対し、労組プロ野球選手会の古田敦也会長(ヤクルト)が「(代理人は)交渉を円滑にするためで、吊り上げじゃない。そりゃ、5000、6000万円上げようという人もいるかもしれないが、ほとんどはしないはず」と反論するなど、波紋が広がった。
さらに11月8日の衆議院労働委員会でも、日本共産党の大森猛議員が「渡辺巨人軍オーナーの不当労働行為予告発言」と問題提起し、吉川芳男労相が「労使間での合意については、当事者間において誠実に対応されることが重要」と回答するひと幕もあった。
同年は古田をはじめ、日本ハム・下柳剛、中日・前田幸長ら9選手が代理人交渉を行ったが、巨人は、松井秀喜が「代理人は立てません。必要のある選手がすればいいことです」とコメントするなどゼロに終わり、結果的に渡辺オーナーの思惑どおりになった。
(文・久保田龍雄)