力強い歌詞を書いた
――星野が作曲、今井が作詞を担当した「絶望という名の君へ」はとりわけ希望を感じる曲だ。星野は温かみを感じる声で「絶望という名の君を強く抱いて 決して退かずに歩んでゆく」「きっと 人は皆 そうやって 生きてゆくのだろう 君は もう 優しい光 それを希望と呼ぶ」と歌った。
今井 (星野から)作詞を頼まれて、「ぐっとくる感じにしたい」と言われたんですが、サウンドがしっとりとしているので、あまりしんみりした曲にはしたくなかった。力強い歌詞を書いたつもりです。
「君は もう 優しい光 それを希望と呼ぶ」という歌詞は、最初「絶望」に対しての「希望」だとそのまんますぎて嫌だなと思って「未来」にしていました。でも、それだとわかりづらい気がして、ギリギリになって「希望」に変更しました。この曲はわかりやすさも大切だと思ったから。
――アルバムの最後の収録曲は今井の壮絶なギターソロの入る「黄昏のハウリング」。弔いの歌にも聞こえる。
今井 (弔いの気持ちは)あったと思います。この曲を最後にするのはかなり前から決めていました。今回のアルバムにはギターソロらしいギターソロが1曲もないと気づき、だったら最後に入れたら面白いのではないかと思って、レコーディングの最後の最後にこのギターソロを入れました。
ワクワクする気持ちのほうが強かった
――新たなBUCK-TICKの幕開けを告げるにふさわしいアルバムといっていいだろう。資料にも「第二章の幕開け」と書かれている。
今井 自分でもそういうことだと思っています。
(櫻井が)亡くなって2、3日、これからどうするか考えました。新しいボーカリストを入れるという発想は一切なかったので、「じゃあ今の4人でやるっていうことだな」と思いました。そのあとメンバー4人だけで集まったときも、全員が「4人でやる」という考えでした。
そうなると必然的に歌うのは僕と星野だろうと。そこから徐々に新しい楽曲の方向性を膨らませていきました。BUCK-TICKという名前ではありますが、新しいバンドになったような新しい音を作りたい。新体制になったことでもちろん不安はありましたが、ワクワクする気持ちのほうが強かったんです。
(構成・ライター 小松香里)