メジャーからの評価はシビア
ただ、メジャーの評価はシビアだ。大会を視察した西海岸のメジャー球団関係者は、「侍ジャパンは良い選手が多い。特に投手ですね。今すぐにメジャーで通用する投手が多い。野手で印象に残ったのは牧秀悟(DeNA)、森下翔太(阪神)ですね。牧は球界を代表する強打者なので、シーズン中からチェックしています。辰己は良い選手ですが、打撃でもう少し突き抜けた武器が欲しいですかね」と語る。
メジャーを取材するスポーツ紙記者も、辰己のメジャー挑戦に厳しい見方を示す。
「リードオフマンタイプなので、NPBで首位打者を獲得するような活躍や30盗塁以上の成績を残さないと、メジャー契約を勝ち取るのは難しいでしょう。投手と違って日本人野手の評価は相対的に低いですから。長打力も少し物足りなさを感じます。成長曲線を描いている選手なので、これから伸びれば評価が変わってくると思いますが……」
俊足巧打をセールスポイントにする選手がメジャーで成功する道は険しい。メジャーで3089安打を放ち、日米通算4367安打をマークしたイチローは別格の例外。ヤクルトで首位打者を3度獲得した青木宣親(元ヤクルト)でもポスティングシステムでメジャー挑戦した際は評価が高いとは言えず、ブルワーズと2年契約を結ぶ前にアリゾナのキャンプ施設で首脳陣がプレーを確認する「入団テスト」を受けている。西武で最多安打を4度記録、シーズン最多216本のNPB記録も樹立した秋山翔吾(現広島)は海外FA権を行使して20年にレッズに入団したが、通算142試合出場で打率.224、0本塁打、21打点、9盗塁。22年はメジャー昇格が叶わず退団し、シーズン途中で日本球界に復帰し、広島へ移籍した。
プレーよりも風変わりな言動がフォーカスされがちな辰己だが、来季はグラウンドでさらなる活躍を見せ、メジャーの舞台に立つ夢をかなえられるだろうか。
(今川秀悟)