今永昇太:米国の現地メディアが「一番のサプライズ」と称賛する大活躍だった。15勝を挙げてメジャー1年目で球宴に出場。「投げる哲学者」は英語で積極的にコミュニケーションを取り、すっかりチームに溶け込んだ(写真:AP/REX/USA TODAI Sports/ロイター/アフロ)
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 ドジャースのワールドシリーズ制覇で、大谷翔平選手と山本由伸選手の活躍が目立った今季だが、彼ら以外にも日本人メジャーリーガーの活躍が光った。日本人初のメジャーリーガー、村上雅則さんが活躍を分析した。AERA 2024年11月18日号より。

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 ポストシーズン進出はかなわなかったが、期待以上の活躍を見せたのが今永昇太(31、カブス)だ。29試合登板で15勝3敗、防御率2.91。投球回数173回1/3と先発ローテーションで稼働した。直球は150キロに満たないが、回転数が多い球質で打者の手元で浮き上がるような軌道を描く。落差十分のスプリットとのコンビネーションでメジャーの強打者を翻弄(ほんろう)し、174三振を奪った。

「彼の一番の良さはクレバーなこと。自分で配球を考え、捕手のサインに納得がいかなかったら首を振れる。メジャー1年目でなかなかできることではありません。データが全盛の時代ですけど、打者の狙い球を察知する洞察力に優れているので危機を回避できる。強い球団で投げていたら17、18勝していたと思います。コンディションに気をつければ、来年以降も十分に通用します」(村上雅則さん)

 同じく左腕で活躍が光ったのが、菊池雄星(33、アストロズ)だ。ブルージェイズからシーズン途中に移籍すると、5勝1敗をマーク。登板日のチーム成績は9勝1敗で地区4連覇の原動力になった。

「もともと力はある投手です。強豪球団のアストロズに移籍し、スライダーの配分を増やすなど変化球の使い方を変えたことで新たな可能性が引き出された。来年はどのチームでプレーするか分かりませんが、市場価値が大きく上がったでしょう。これからが全盛期でキャリアハイの成績を残せると思います」(同)

ダルは投手陣のお手本

 ドジャースをポストシーズンで最も苦しめたのが地区シリーズのパドレスだった。ダルビッシュ有(38)は第2戦で7回3安打1失点、第5戦で7回途中3安打2失点といずれも好投。楽天からFA移籍した松井裕樹(29)は第4戦で救援登板して1回無失点に抑えた。

「ダルビッシュ投手は若手に助言を送り、投手陣の良きお手本になっている。まだまだ衰えを感じないし、あと3、4年は先発ローテーションで投げられる。松井投手は来年が勝負ですね。シーズンで64試合登板して1年間を乗り切ったことは大きな財産になる。ブルペンでの調整法など日本と違う部分を学んだことで、2年目に生きてくる。相手球団もデータを取っているので、そこを乗り越えるパフォーマンスを見せられるか。僕もメジャーでリリーフだったので気になる投手です」(同)

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日本人メジャーリーガーたちに送るメッセージ