テンシャル代表取締役CEO:中西裕太郎さん(なかにし・ゆうたろう)/1994年、埼玉県生まれ。高校卒業後、インフラトップ(現・DMM Group)の創業メンバーとして活動し、リクルートキャリア(現・リクルート)に転職。新規サービスの商品企画などに従事。2018年にウェルネス関連事業のテンシャルを設立。高校サッカー部時代にはインターハイ出場の経験もあるが、病気によりプロへの道を諦めた経験がある(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年11月18日号にはテンシャル 代表取締役CEO 中西裕太郎さんが登場した。

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 寝ている間に、体のコンディションを整える「疲労回復パジャマ」。リカバリーウェアと呼ばれるこの衣類は、遠赤外線の力により血行促進や疲労軽減をサポートする一般医療機器だ。企業との実証実験を通し、その効果を科学的に証明している。

 日常生活の中で“健康”を取り入れる発想には、自身の原体験があった。学生時代はサッカーに打ち込み、高校ではインターハイ出場も経験した。しかし、高校3年の時に心臓系の疾患を患い、プロへの夢は絶たれた。

「新しいことにチャレンジしたくても、健康じゃないとスタートラインにすら立てない」。その思いのもと、23歳の時にテンシャルを起業。「事業を続けていくためには、利益を出さないといけない」とのシンプルな考えを軸に、自分が担当を離れた後も持続可能かを確認するために石橋を叩いて物事を進める。

「ビジネスもスポーツと同じように、勝ち負けの世界だと思っています。僕らの価値観の定義は、お客様にいかに選ばれ続けるか。そのために高い基準を持って物事を考えています」

 その“高い基準”を身につけるために、自分たちより数歩先を進んでいる企業の経営者や、海外投資家の話に積極的に耳を傾ける。10代の頃からベンチャー企業に身を置いていた経験から「防げる失敗は防ぐとの感覚が磨かれたかもしれません」と振り返る。

「自分は人よりも寿命が短いかもしれないと考えたら、時間はさらに限られます。だからこそ、無駄なことはしたくないんです」

 現在7年目。経営の考え方にも変化が出てきた。当初は自社の事業をどう伸ばし、成長するかを考えていたが、今ではそのフェーズが1段階上がったと感じている。

「売り上げだけではなく、社会にどんな価値や影響を与えていくかを考えることが、今まで以上に身近になってきたと思っています」

 今後はまず国内において「これ以上、テンシャルが日常生活を良くできない」というレベルまで到達することが目標だ。そして、ゆくゆくは世界中の人の健康をより良くしていきたいと語る。

 会社名の由来は「ポテンシャル」(可能性)だ。その意味の通り、自身にも会社にも、限界を課していない。(フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年11月18日号