武内陶子さん
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 秋がようやくやってきましたねー。2024年の夏は厳しい暑さでした。雨の降り方も尋常ではなくなってきて、いつ何時も油断できない日々。みなさまが健やかにお過ごしであることを心から願っています。

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 さて、連載第4回は、今年の大みそかを10倍楽しむ方法についてお送りします。

 11月になると私はいつも思い出すことがあります。それはNHK時代に担当した紅白歌合戦の総合司会のこと。

 2003年の暮れ。あれから20年以上たっているのに、あの時のことを思い返すと、一瞬でその時の緊張が私のカラダを支配します。

 それほどの大きな体験でした。

 紅白歌合戦。みなさまご存じ、大みそかの「生」放送です。

 私が担当した2003年は夜7時半から11時45分までの4時間15分(途中9時台のニュースで10分間の中断あり)。その年は62組のアーティストが出場し、NHKホールではたった一つのステージの上で、入れ代わり立ち代わりパフォーマンスするわけです。家で放送を見ていると、興奮の中にも、次から次へとスムーズに進行されているように見えるでしょ?

 それがね、実はテレビでは見えていない現場、ステージの上は、もう上を下への大騒ぎなんです。

 つまり、みなさんが見ているテレビのサイズに切り取られているのは全体のほんの一部で、実はその裏では同時に何百人という人がいろんな動きをしているのです。あたりまえだけど。なかなか思いが及ばないでしょ? 私もやってみるまでは、全くわかっていませんでした。

 なにしろリハーサルは、前日30日と大みそか当日の2日に分けて1回きり(そこまでは想像だけで準備するのよ〜!)。つまり、全体がわかるのは当日の生放送だけ。ひえ〜〜〜!ほら、思い返しただけで鳥肌が立つ〜(涙)

 もうね、本番で司会しながら「えー、聞いてないよ〜!」と、泣きそうになる瞬間がいっぱいあって、放送で表情はニコニコしながら、心の中では「なにこれ〜???」の連続。

 だってね、私がマイクでしゃべっている横で、トンテンカンテン、どったんばったん、がらがらがら、しゃーーーーーー!(巨大なセットが後ろから運ばれてくる音)みたいな大騒ぎなのよ。(マイクの性能はすごいんです。必要な音しか入らない!)

 考えてみれば、歌と歌の間の短い転換の間に、次のセットの建て込み作業。舞台上で工事が行われているようなものですから。

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紅白はスタートした瞬間から「巻き」が入る?