38歳で「紅白」の総合司会に抜擢
たとえば、今、大きなマルチビジョンを背負って歌手が歌ったと思えば、ちょっと司会者が他のことをしゃべっている間に、舞台の上は様変わり。次の巨大なセットが運び込まれ、歌の始まりとともに100人近い踊り手さんたちが桜の枝を手に、ササササーッと走り込んでくる。
事故なく、スムーズに放送ができているのが奇跡のように思えます。すごいチームワーク。
大みそかは、NHKのあらゆるところが出演者控室になり、食堂にまで、バックダンサーなど出番を待ついろいろな人たちが待機しています。歌手や関係者はもとより、関連の出演者、ホールに観覧に来る人まで含めるとどれだけ多くの人が渋谷のNHK界隈に集まっていることか。とにかく巨大なプロジェクトです。
その総合司会を言い渡された時、願っても経験することができないこの大役を任されるということが信じられず、私はぼうぜんと立ち尽くしました。
しかも総合司会って……。その頃は、総合司会なんてNHKの大御所アナウンサーが担当なさるものだと思っていたので、38歳だった私はまさに青天のへきれき。そして、その仕事の内容はといえば、一年の締めくくりの大みそかの最後の最後の放送の締めくくり。
具体的に言うと、62組のアーティストが全て無事パフォーマンスを終え、紅白どちらが勝ったかきっちり決着をつけて、優勝旗を渡し、そして蛍の光がちゃんと演奏されて、最後にステージ横からシュパーッ!!と飛び出る金銀テープ(特効といいます)が放たれ、午後11時45分に、「ゆく年くる年」の除夜の鐘、ゴ〜〜〜〜〜〜ンに無事につなげること、が仕事なのです。
よく「紅白は番組スタートした瞬間から『巻き』が入る」と言われますが、あながちうそでもなく。そのぐらい大変。
だってね、それぞれのアーティストが予定時間よりたった「1秒」押したとして、60組で1分。チリツモです。1分オーバーすればどうなります? 生放送が途中で終わってしまうのよ〜!