たとえば、訪れてみて気に入った土地があったら、長期間滞在してみる。可能ならホームステイをして、暮らしを体験。食事はなるべく、市場で現地の食材を買って自炊。さらに、現地の言葉で会話することが大事だと考え、南米に行く際にはグアテマラで2週間、スペイン語の語学学校に通った。

 ルートや予算の計画は、きっちりとは立てなかった。その土地に着いてから、現地の人の話を聞き、3日分くらいの計画を決める。どの土地にどれくらい滞在するか、1カ月後にどの国にいるのかも、わからない。円相場も物価も大きく動いていたため、旅の予算も立てようがない。もともとあった貯金から、帰国後に最低限必要な金額だけ残しておくことを決めていた。

価値観を揺さぶる出会い

 行く先々でのさまざまな人との出会いは、2人の価値観を大きく揺さぶった。

 詩歩さんが印象に残っているのは、グアテマラで出会ったある日本人女性だ。

グアテマラのアティトラン湖の近くの村にて。マヤ系先住民の衣装を着る女性たち(提供写真)

「スペイン語を学ぶために留学に来ている女性がいました。年齢は21歳くらい。グアテマラに来てから半年くらいだそうで、1人で現地の市場に買い物に行って、ご飯を作って、すっかり現地となじんだ生活をしていて。私たちのことも『なにか困ったことあったら言ってくださいね!』と気にかけてくれるんです。彼女は行動力も自立心もすごくて、影響を受けましたね」(詩歩さん)

 拓哉さんが思い出すのは、ペルーのアンデス山脈の麓町、ワラスでの光景だ。

「道端で、大きい風呂敷を持ったおばあちゃんたちが野菜を売っていたんです。そんなには売れていないのを見て、『この仕事で生活していけるのかな?』と心配しました。でも、あとでワラス在住の日本人に聞いたら、彼女たちは持ち家に住んでいるので家賃はかからないし、農作物は自給できるから食べることにも困らない。だから『たまに売れたらいい』くらいの気持ちなのでは、と。

 それまで自分が当たり前だと思っていた、『家賃を払うために働くこと』や『懸命に働いて成長すること』が、実は当たり前じゃないんだと気づきました」(拓哉さん)

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