多死社会・高齢社会の今、「グリーフケア」が注目されている。グリーフとは、日本語で「悲嘆」という意味。大切な人を亡くした際、人は大きな悲しみや喪失感を抱える。
長年にわたりグリーフケアの研究と実践を行ってきた第一人者・坂口幸弘さんと赤田ちづるさんに、悲しみや喪失感と自分なりに向き合い、やがて再び歩き出すためのヒントを聞いた。
坂口さん、赤田さんの著『もう会えない人を思う夜に ―大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと−』(ディスカヴァー)から一部を抜粋、再編集し紹介する。
死別後は、大切な人を亡くした喪失感に加え、その死に関連したさまざまな問題に直面し、心身ともに疲れ果ててしまいがちです。
気持ちばかりがあせって、なかなか物事が思うように進まないこともあります。
父親と母親を立て続けに亡くした50代の女性は、ゆっくりと悲しむヒマもなく、遺産相続のことや、実家の処分に追われていました。煩雑な手続きがなかなかうまく進まないこともありましたが、実家がなくなることが寂しくて早く進めたくないという思いもありました。
そのような複雑な思いが重なり、心身ともに疲れ果てている様子でした。
心も体も疲弊しているときは、ゆるりと休むことを「今日の仕事」にしてみましょう。
何もしない日を作るのです。
目を閉じて横になるだけの時間を過ごしてみます。
何もしないことを難しく感じる人もいると思いますが、あえて休むことも長い人生の中で、ときには必要だったりします。