女性たちの話には必ずと言っていいほど「母」が登場する。母みたいになりたい、違う生き方がしたいなど、それぞれの人生に大きな影響を与えている(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 アエラが実施したアンケートで、専業主婦を選択した理由の中に「自分の母がこうだったから」と回答する人も多い。女性たちの生き方の選択に大きな影響を与える母の姿とは。AERA 2024年11月11日号より。

【図表を見る】第一子出産後も就業継続する女性は増えている

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 アエラが9月から10月にかけてオンラインで行った「専業主婦と働く女性」のアンケートで、“やむを得ず専業主婦になった” という人も多かった。

栃木県に住む女性(46)も、そのひとり。20代後半で結婚して2年後に長女を出産。3年後に次女、そのさらに3年後に三女を産んだ。幼い子どもはすぐに体調を崩すが、実家は遠方のため頼れない。子どものころから「ずっと続けられる仕事に就きたい」と思っていたが、長女の出産を機にやむを得ず退職。専業主婦生活になった。

女性は、娘たちには仕事をしてほしいと考えている。一方で「両立は大変すぎる」との思いもある。働き方の見直しや、一度退職しても正社員として戻りやすくするシステムなどを整えてほしい、という。

 埼玉県に住む女性(57)は専業主婦の母を見て育ち、「絶対、専業主婦にだけはなりたくない」と思っていたという。父はあからさまな男女差別をする人ではなかったが、母が父を立てる雰囲気に違和感を覚えていた。「いま思うと、経済力が夫婦間の序列を生むような気がしたのだと思う」と振り返る。

 女性は音楽大学を出て教師になり、別の学校の教師だった夫と結婚した。結婚を前に実家に挨拶に行くとき、夫が、夫の母からの助言を受けて「お嬢さんをください」と言おうとしていると聞いて「私は物じゃないんだから」と止めたという。それくらい、働いて自立した存在でありたいという意識は強かった。

 だが、女性は結婚を機に退職した。教師生活が忙しすぎて「フルタイムで働きながら子育てをするのは無理」と感じていたからだ。

 その後、2年ごとに長女、長男、次女と3人の子どもを出産。育児にかかりきりになった。母乳での子育ては手がかかるとはいえ、「働いていたときに比べるとずいぶん楽な生活をしているな」と感じていたという。

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