名カメラマン弦巻勝さん(写真左)。2005年1月、森内俊之王将-羽生善治挑戦者戦を撮影中(写真:松本博文)
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年11月4日号より。

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 読書の秋ということで、筆者が独断でお薦めする、将棋に関する本をご紹介したい。

 松本渚作『盤記者!』(文春e-book)は古参の愛棋家から、最近の「観る将棋ファン」まで楽しめる漫画。将棋について全然知識のなかった女性担当記者の目を通して、業界の伝統的なあるある話から、ネット中継など最新のトピックまで、様々なネタがちりばめられている。

 増村十七作『花四段といっしょ』(朝日新聞出版)は若手男性棋士・花つみれ四段とその周囲の人々を描く漫画。「さすがにこんな人はおらんやろ」というキャラの立った登場人物が多く、理屈抜きで笑える。一方で、初の女性棋士の期待がかかる踊朝顔(おどるあさがお)三段が奨励会で苦闘するあたりの描写はリアル。涙腺をやられる可能性が高いので、家で一人で読むのがよさそうだ。

 今年の将棋ペンクラブ大賞では弦巻勝著『将棋カメラマン』(小学館新書)が文芸部門大賞を受賞した。半世紀にもわたり将棋界で写真を撮り続けてきた名物写真家の思い出がつづられた貴重な記録だ。また同賞優秀賞は松本博文『棋承転結 24の物語 棋士たちのいま』(朝日新聞出版)。谷川浩司十七世名人、羽生善治九段、森内俊之九段、渡辺明九段ら、現代を代表する棋士、女流棋士たちへのインタビュー集だ(自著のPRとなって恐縮です)。

 今年9月8日、『日本将棋連盟 創立100周年誌』が刊行された。1924年以来の将棋界の歴史を俯瞰しつつ、詳細にたどれる一冊だ。全576ページの大部で、手にするとずっしりとした重みがある。弦巻さんが撮影した迫力ある写真も多く収められている。微力ながら筆者も制作に協力した。1万4300円と少々お高いが、後世の将棋史家だけでなく、広く愛棋家の座右に置かれる一冊となることを願いたい。(ライター・松本博文)

AERA 2024年11月4日号