窮地でも泰然自若
実際にドジャースは苦戦した。1戦目は7-5で先勝したが、2戦目にダルビッシュ有を攻略できずに2-10で大敗を喫すると、3戦目も5-6で競り負けて王手を掛けられた。窮地に追い込まれ、フリーマン、ミゲル・ロハスと主力の2人が故障を抱えて満身創痍の状態に。だが大谷は泰然自若の姿勢を貫いた。記者会見で、「ここまで1勝2敗というのも別に考える必要もないですし、単純に2連勝するゲームだと思えばいいんじゃないかなと思います」と語った。
有言実行の戦いを見せる。4戦目は大谷が2回に2点目の右前適時打を放つなど8得点を奪い、「ブルペンデー」で8投手をつぎ込んで完封勝利。雌雄を決する5戦目の先発マウンドを託されたのは山本だった。5回を2安打無失点に抑えると、打線がダルビッシュから2本のソロで得点を奪い、2-0でローゲームを制した。ドジャースを取材するスポーツ紙記者は、「ワールドチャンピオンになったら、この試合が分岐点になると思います」と強調する。
重圧を力に変えて
「山本を見たら試合前の表情が顔面蒼白だった。あんなに緊張した姿はオリックス時代も記憶にない。相当な重圧が掛かっていたと思いますが、パドレス打線に臆せず腕を振った。メジャー挑戦1年目の今年は故障などで思うようにいかなかったですが、大きな自信をつかんだと思います。完璧に近かったダルビッシュの2球の失投を見逃さず、アーチを打ったキケ・ヘルナンデス、テオスカー・ヘルナンデスもすごい。この勝利後のシャンパンファイトで、ドジャースの選手たちがチームメートと喜びを爆発させていたのが印象的でした。それほど苦しい戦いだったのでしょう。この試合に勝った意味は非常に大きい」
現地で取材するフリーライターは、大谷を「天性の勝負師」と形容する。