ナ・リーグ優勝決定シリーズのメッツ戦3戦目で特大3ランを放った大谷。負けられない戦いでの勝負強さこそ大谷の真骨頂だ(写真:AP/アフロ)
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 ドジャースとヤンキースの頂上決戦。ワールドシリーズの舞台にたどり着いた大谷翔平選手を、現地で取材する記者はどう見ているのか。AERA 2024年11月4日号より。

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 前人未到の記録を次々と打ち立てたドジャース・大谷翔平が最も渇望していた世界一という目標に向け、ワールドシリーズの舞台に初めてたどり着いた。最後に立ちはだかる相手はア・リーグ覇者のヤンキース。ドジャースとヤンキースがワールドシリーズで対戦するのは1981年以来43年ぶりだ。アーロン・ジャッジ、ファン・ソト、ジャンカルロ・スタントンなど強打者を擁し、投手陣もエースのゲリット・コールを中心に先発投手の陣容はドジャースを上回る。戦前は「ヤンキース有利」を占う声が現地の識者の中で多かった。

 だが、ドジャースは逆境を幾度もはね返してきた。今季は98勝64敗で両リーグ通じて最高勝率・605をマーク。最も有利なシードで12年連続進出したポストシーズンを戦うこととなったが、20年以来4年ぶり8度目のワールドシリーズ制覇に向け、下馬評が高いわけではなかった。その要因はコマ不足が深刻な先発陣だ。クレイトン・カーショー、タイラー・グラスノーが故障のため状態が上がらず、先発で計算できるのはジャック・フレアティただ1人。山本由伸は右肩腱板損傷からの復帰明けで、21年に16勝を挙げたウォーカー・ビューラーも今季は1勝のみ。メジャーを取材する通信員はこう分析していた。

「ドジャースは先発陣に不安が多すぎる。大谷、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンの『MVPトリオ』が中心になる強力打線で打ち勝つ野球に持ち込みたいが、好投手と対戦すれば得点を取るのは難しい。ポストシーズンの地区シリーズで対戦した同じナ・リーグ西地区の2位・パドレスは強力な先発陣を擁し、攻守のバランスがいい。ドジャースが敗退しても不思議ではなかった」

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窮地でも泰然自若