本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 くりーむ姉貴さん。大変ですね。毎朝、4時半に起きてお弁当を作っているんですね。それで仕事にも行かれてるんですよね。

 なおかつ、夫は、「子育てに興味が無く、金銭面を含め全て」、くりーむ姉貴さんが支えられているんですね。

 それは本当に大変でしょう。

 せっかく引越して、がんばろうとしているのに、やる気を感じられない息子さんだと、嫌になってしまうんですね。

 その気持ちは、ようく分かります。

 くりーむ姉貴さん。息子さんは、入学した当初は、弁当も完食し、練習にも意欲を見せていたんですよね。

 それが半年たって、だんだんと弁当を残したり、練習に意欲を見せなくなったんですよね。

 ということは、息子さんは、練習をする中で、変わっていったということですかね。

 練習で何があったんでしょうか。

 確認しますが、息子さんは、4月、強い意欲を見せてましたね。レギュラーを夢見、甲子園を夢見て、希望に胸を膨らませていましたね。

 野球が大好きな息子さんが、わざわざ越境していくという高校ですから、野球の名門校ですよね。

 野球部員は何人ですか?名門校なら、各地から「逸材」が集まって、100人なんてのは普通ですよね。各学年、30人以上いるということですかね。30人、野球に自信のある人達が集まるのが、名門校たる所以ですね。

 そういう環境の中で、息子さんは練習を始めたわけです。最初は無我夢中でしょう。先輩の言うことを必死に聞いて、先生の指示にとにかく従い、死に物狂いで部活を続けたでしょう。

 でも、数カ月たつと、だんだんと周りが見え始めてくるんじゃないですか。1年生だけで、バッティングしたり、守備練習したりすることも少しはあるでしょう。

 ゆっくりと、自分と周りの実力が見えてきたんじゃないでしょうか。

 くりーむ姉貴さん。ここからは、僕の想像です。間違っているかもしれません。

 でも、僕なら、息子さんの胸中をこう想像します。

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