楽しそうに手品の練習に励む佐藤基行さん(撮影/國府田英之)

世の中に恩返しをしたいという思い

 その馬場さんは、「共通の目的を持って活動できるか。それが大事なんじゃないかと思います」と話す。

 手品をとことん楽しむことと、もう一つ大切なのは「やりがい」だ。

 手品の習得だけが目的なら、多分飽きてしまっただろうと全員が口をそろえる。

「サラリーマン生活を終えてから、世の中に恩返しをしたいという思いがどこかでありました。イベントで手品を披露して高齢者の方たちに喜んでもらえると、逆に僕たちもうれしくなるんですよ。だから、もっと楽しんで元気になってもらおうって、やる気が出るんです」(中澤さん)

 共通の思いと目的があれば、そこには昔の肩書も上下関係も、エゴも無用。自然に仲良くなるだけなのかもしれない。

 12月のイベントに向け、練習を重ねる「てじなーず」。目下、新メンバーを募集中だ。

 佐藤さんは、「今」をこう話して笑う。

「本当にいい仲間と出会えましたし、人生を楽しんでいますよ。人それぞれ個性があるから、高齢者が絶対に友達作りをしなきゃいけないとは思いません。でも、楽しいことがあるかもしれないから、思い切って外に出てみてもいいんじゃないかな」

 そんな軽い気持ちを持つことが、定年後の「友達いない問題」を解決する一歩なのかもしれない。

(國府田英之)

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