手品の練習をする佐藤基行さん(左)と渡辺淳三さん。共に80歳だ(撮影/國府田英之)
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 日本の男性はコミュニティー作りが苦手とされ、特に定年退職後の「友達がいない問題」はたびたびクローズアップされる。だが、中には80歳でも、思い切って外に出てみたら友達ができた、毎日が楽しくなったという人もいる。そんな「友達ができた」男性たちは何が違うのか。定年後に人との輪を作り、人生を楽しむ男性たちに話を聞き、ヒントを探ってきた。

【データ】年齢によってまったく違う「孤独感」。1位となった年代は?

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 高齢者の孤立・孤独の問題は、日本だけではなく海外でもクローズアップされている。生活がすさみ、健康を害する大きなリスク要因でもあるためだ。

 とりわけ日本の男性はコミュニティー作りが苦手との指摘がかねてあり、「定年後の友達いないおじさん」問題がたびたび取り沙汰されている。

 だが、高齢になってからできた「友達」同士で生きがいを見つけて活動している人たちもいる。

 東京・足立区。下町のとある福祉施設で、入所者らの前で手品を披露する男性たち。足立区内の施設などを訪問し、手品を披露する活動をしている男性グループ「てじなーず」のメンバーだ。

 全員が高齢といえる年齢だが、一生懸命に手品を披露する。成功すれば客から拍手があり、ミスをすれば愛のあるヤジが飛ぶ。時には「タネ(仕掛け)が分かっちゃうよ!」と鋭い突っ込みが入る。トリに登場した男性は、見事な技で客を楽しませ、喝采を受ける。

 足立区社会福祉協議会では、高齢者の孤立対策の一環として、住民が運営者となり、趣味などを通じてつながり合う「ふれあいサロン」作りを進めている。その一つとして、今年から活動を始めたのが「てじなーず」だ。

 メンバーで、「先生役」を務めるのが、手品歴二十数年の馬場幸男さん(76)。前述のイベントでトリを務めて拍手喝采を浴びていた男性だ。それと渡辺淳三さん(80)、中澤宏文さん(68)、佐藤基行さん(80)、内山洋さん(74)の「ど素人」4人を含めた5人組である。

 平均年齢は75.6歳……とハイアベレージだ。

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「どうせ余った人生だ」