棋士編入試験第2局に臨む西山朋佳女流三冠=2024年10月2日、東京都渋谷区
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年10月28日号より。

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 いまからちょうど50年前の1974年。日本将棋連盟は女流棋士制度を創設した。10月31日には1期生の蛸島彰子(現女流六段、78)ら6人に免状が手渡された。初のタイトル戦・女流プロ名人位戦(現女流名人戦)では、蛸島が優勝した。

 以後、女流棋界は少しずつ発展し、50年の間に119人の女流棋士が誕生。層も厚くなり、レベルも大きく向上した。タイトル戦の数は1から8にまで増えた。ここ最近は「2強」と呼ばれる福間香奈女流五冠(32、旧姓:里見)と西山朋佳女流三冠(29)が8大タイトルを分け合う形が続いている。現時点で福間は清麗、女流王座、女流名人、女流王位、倉敷藤花。西山は白玲、女王、女流王将を保持している。

 棋戦の数が増えたのはもちろん喜ばしい。一方で福間、西山の両者はずっと、大変なハードスケジュールの中で対局をこなし続けている。

 福間は23年5月に元奨励会三段の福間健太さんと結婚(発表は今年24年1月)。今年8月には妊娠が発表され、祝福の声で包まれた。

 白玲戦七番勝負ではこれまで、対局者は畳の上に座り、和服で対局していた。今期は挑戦者・福間の要望で特例として、盤はテーブル上に置かれ、椅子に座って、洋服での対局が認められた。

 10月15日。西山に福間が挑戦する女流王将戦三番勝負第2局で、福間は体調不良を申し出て、対局が中止となった。現在の規定に基づいて、福間は不戦敗とされた。また10月19日に予定されていた白玲戦第5局も同様に、福間の不戦敗となった。もちろん、運営上やむをえない面もあるだろう。しかし多くのファンの目には、いかにも厳しい措置に映ったのではないか。女性が安心して将棋を指せるためには、さらなる環境改善の余地もありそうだ。

 福間は今年11月から来年2月まで、産休に入る。まずは無事な出産を祈りたい。(ライター・松本博文)

AERA 2024年10月28日号