著者の鴻上尚史さん(中央)と開成学園の野水勉校長(左)、国語科の塚本綾子さん(右)で鼎談をしてもらった。「この本を読んだ子たちが今後どう変わるか楽しみ」(鴻上さん)(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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 開成中で夏休みの課題に採用された鴻上尚史氏の新刊『君はどう生きるか』。10代に向けた多様性の時代を生きるヒントが詰まった1冊だ。多様性について、鴻上氏と開成中・高校長の野水勉さんらが意見を交わした。AERA 2024年10月21日号から抜粋。

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野水勉:私は開成の卒業生なのですが、私がいた約50年前は、中学生は丸刈りで布カバンという校則がありました。当時は高校紛争があって、丸刈り廃止運動があり、私の2学年下から廃止になりました。そのあたりから徐々に民主化され、今は制服以外の校則はほとんどありません。

鴻上尚史:僕は愛媛の県立高校で、進学校だったけれど、校則はガチガチにあって、そのブラック校則と闘ってきたんですね。生徒指導の先生から「君のような優秀な生徒には校則はいらないけど、校則が必要な生徒は山ほどいるんだ」と実に汚い言い方を毎回されていたんですよ。

野水:昔は非行に走らせないために部活は全員参加、という学校もありました。そのような管理型の教育はまだ多くの学校で行われていると思います。

多様性を作るのはしんどい

鴻上:校則を厳しくして自分の頭で考えることをやめさせ、黙って指示に従わせれば見せかけの協調性は作れます。それは本当の多様性を作るより楽なんですが、学校から送り出した後の子どもたちの人生を考えたとき、多様性の中で生きられる人間に育てた方が明らかにいい。ただ、多様性を作るのは正直しんどい。

野水:多様性の世界は、ルールが一つではないですからね。

鴻上:中学だけ、高校だけの学校だと中3や高3が引退したら、結構同質の中でもまれる感じになりますが、中高一貫校だと中1から高2までいるので多様性が生まれますね。

野水:多様性といえば、うちは高校から100人入学してきます。中学から入ってくるのは300人ですから4分の1が高校から入ってくるわけです。地元の公立校から来る子はもちろん、海外に滞在していた、ご両親のどちらかあるいは両方が外国籍です、という子もいます。高校から入ってくる生徒たちは学校に新しい風を吹き込んでくれていますし、いや応なく学校に多様性が生まれています。

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