作家・演出家:鴻上尚史さん(66)(こうかみ・しょうじ)/早稲田大学在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げし、以降多数の作品を手がける。「AERA dot.」での連載「鴻上尚史のほがらか人生相談」が人気(撮影/写真映像部・和仁貢介)

SNSとのつき合い方

塚本:生徒たちにはやはり「スマホ」の章が刺さっていました。

鴻上:僕らはスマホがあるときとないときを知ってるから、スマホを手放す意味もわかるんだけど、物心ついた時からスマホを持っている子からすると、スマホの問題点はわかりにくい。本ではスマホのマイナス面を七つ紹介しましたが、ピンとこない子もいるかもしれない。

野水:スマホの扱いは難しいです。我が校では基本的に持ってくるのは問題ないのですが、中学の段階ではロッカーに入れて教室には持ち込まないなど、各学年の先生方に扱い方を委ねています。昨年から中1全員にiPadを支給し、授業でデバイスを使う機会は増えました。

塚本:生徒からはSNS運用で自己肯定感が高まる人もいる、という意見もありました。

鴻上:それができれば願ったり叶ったりなんですが、SNSに居場所を頼りすぎると、それが急になくなったら大丈夫なのか、という懸念はありますけどね。自慢できることをとことん他人に見せつけていたのに、もっとすごいやつが現れてうっちゃられるみたいなこととか。だからやっぱりSNSに自己肯定も自己否定も荷重をかけすぎるのは怖いと思います。

塚本:中学生や高校生を対象にした鴻上さんのワークショップはありますか?

鴻上:その依頼は時々あるんですが、だったら子どもでなく、先生を対象にやった方が早いかな、って思ったりするんです。特に小学校だと表現豊かな先生が担任のクラスってやっぱり子どもたちも表現豊かになるんですよ。すごく無口っていうか無表情の先生のクラスは無表情な子が多くなる。あと子ども対象の場合、小学生はどんなに最初緊張してても軽いゲームなんかやっていくとだんだん楽しくなって表情豊かになるし、高校生ぐらいになると身構えていても、「これやって、表現力がアップしたらモテるぞ」っう言うと態度が変わるんです(笑)。一番面倒くさいのは中学生。男女問わず、自意識の塊みたいな存在なので。だから今回この『君たちはどう生きているか』を中3に読んでもらってよかったです。少しでも自分の中のモヤモヤが晴れた子がいたらいいなと思いますね。

(構成/編集ライター・江口祐子)

AERA 2024年10月21日号より抜粋・加筆

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