著者の鴻上尚史さん(中央)と開成学園の野水勉校長(左)、国語科の塚本綾子さん(右)で鼎談をしてもらった。「この本を読んだ子たちが今後どう変わるか楽しみ」(鴻上さん)(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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 友人関係や進路など10代には悩みがつきもの。あの開成の生徒も例外ではない。そんな生徒たちに、1冊の本が夏休みの課題として手渡された。鴻上尚史氏が10代に向けて書いた新刊だ。この本が開成中で課題図書に選ばれた理由や開成中生の反応などについて、鴻上氏と開成中の校長、教諭が語り合った。AERA 2024年10月21日号から抜粋。

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鴻上尚史:今回、この本(『君はどう生きるか』)を開成中で夏休みの課題に採用していただいたのはどんな理由からですか。

塚本綾子:現在私は中3の現代文を担当しています。そこでテーマとしているのは、今を知り、10年後を考える、なんですが、2学期の授業内容を考えjjhjbhjgていたときに鴻上さんの新刊を読ませていただき、これはうちの中3に読ませるべきだな、と。

鴻上:それはなぜ?

塚本:開成はどの行事も生徒が主体的になって取り組むんですが、特に5月の運動会は一大行事です。高校生になると生徒同士で話し合い、考えて動く、ということが求められるので、特に最初の章で書かれているコミュニケーションについてはすごく参考になるだろう、と。「論破ではなく、対話がかっこいい」とか「51対49で説得すること」などですね。

鴻上:生徒さんたちのアンケートをいただきましたが、刺さった章は「コミュニケーションについて」がいちばん多かった。

「救われた」生徒も

野水勉:開成の運動会ってすごく特徴的なんです。高校と中学を縦割りにして8色のチームに分けて戦います。高校は1学年8クラスありますからクラスごとになりますが、中学は7クラスしかないので7クラスを八つの組に分ける。そして各組で下級生をどう指導するか、どうしたら勝てるのか、前年度から喧々諤々の議論をするんですが、自分の意見を押し付けてしまって反発される、といった光景もよく見られます。ですからコミュニケーションの技術は必須です。

鴻上:中学の7クラスを八つに分けるのはどうやるんですか?

野水:各クラスで出席番号順に1クラスを八つに分けます。

鴻上:なるほど! それなら公平ですね。さすが長年の知恵ですね。

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