10月1日、臨時国会が開かれ、石破茂氏が内閣総理大臣に指名された。石破内閣の外交・安保分野は、外相に岩屋毅元防衛相、防衛相は中谷元・元防衛相とベテランが配置された。石破首相自身は総裁選を通じて、日米安保条約改定および日米地域協定見直しといった非常に大きな政策テーマを掲げている。だが、どれにおいても米国との大掛かりな交渉が必須。となると気になるのは、石破首相の米国の相手方の外交姿勢だ。11月の大統領選挙の共和党候補であるトランプ氏の外交は前大統領として十分報道されている。そこで今回は、民主党候補のカマラ・ハリス氏について、アメリカン大学やジョージワシントン大学で専門講師(国際関係論)を務める芦澤久仁子さんが寄稿。日本人が知らないハリス氏の「意外な顔」が見えてきた。
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意外と強硬路線?
7月下旬のバイデン大統領の大統領選挙からの撤退表明を受けてハリス氏の候補者指名が確実になった頃、彼女の外交面での可能性については「バイデン外交を継承」「経験不足」というのが一般的な見方だった。
そんな当初の見方に加え、「思ったより強硬派かも」という指摘が最近出ている。8月終わりの民主党の全国党大会における大統領候補指名受諾演説や、先月10日のトランプ前大統領とのテレビ討論会での発言等がその背景にある。
例えば全国党大会では「アメリカが世界最強で最大の殺傷力のある軍隊を維持することを保証する」、「アメリカの安全と理想を守ることにおいては決して揺るがない」と強い言葉で宣言し、イランとその関係テロリストの脅威に対しては「必要なあらゆる行動をとることを躊躇しない」と言い切った。
さらにテレビ討論会では、「金正恩のような独裁者らに取り入ることなど決してしない」、「対中国政策とは、アメリカが21世紀の競争に勝利することである」など、あからさまな言い回しが目についた。
これらに対して識者たちの多くが、「意外と強硬派、好戦的」と反応し、中には「『アメリカ例外主義』(米国が世界の自由と民主主義を推進のリーダー役を担う特別な国、という考え方)をこれほどはっきり押し出したのは、ブッシュ大統領以来のことだ」と、ハリス氏を好戦的ネオコン主義で知られるブッシュ大統領の延長に置く見方まで出てきた。