以上を合わせて考えると、ハリス政権が誕生した場合、米国の外交・安全保障政策全般があからさまに強硬路線へと転換する可能性はかなり低いだろう。しかしながら、ケース・バイ・ケースでタカ派の好戦的な行動をする可能性を排除することも出来ない。特に、対外面での強硬姿勢が国内政治的に有利に働く、という計算がされた場合である。いずれにせよ、国内政治状況の動向が、これまでに増して外交政策に影響することになるだろう。
翻って、石破首相にとって、ハリス大統領は、実務的で情報通の、概ね安定した同盟パートナーとなるだろう。同時に、日米地位協定見直といった重大な二国間交渉では、非常にタフな交渉相手になることが予想される。そして、アメリカの国内政治・社会情勢により一層の注意を払うことが必要となる。
最後に、ハリス氏の興味深いエピソードをもう一つ。
ハリス氏は副大統領就任した最初の年に、政府の情報機関が作る個人機密文書に性差別表現が使用されているかどうか、担当組織に全体調査をさせている。彼女が就任当初に、ある国の指導者(女性だった)の機密ブリーフィングを受けた際に、性差別的な言葉が複数使われたことに気づき、問題視したからである。そして、今後そういった性差別表現が使用されないように、担当者ら全員に訓練を受けさせた。
つまり、性差別的な表現の使用には非常に厳しいということである。
性差別については問題山積みの日本の政治の世界に長く身を置いてきた石破首相。ハリス大統領との対話の際は、この点についても十分に注意すべきだろう。