ーー1回目の投票では、党員票でも高市氏は109票と、石破氏の108票を上回っていました。

 岸田政権が支持率を落としている一方で、「初の女性首相」といった期待などを受け、高市さんは着実に人気を集めてきました。また、批判は出ましたが、高市さんが9月上旬にリーフレットを配ったことも票を集めた要因の一つだと思います。選挙管理委員会はかねて「金のかからない総裁選」を掲げており、告示前でも政策パンフレットなどの郵送を禁止していましたが、高市さん側は「選管が通知した4日より前に送付作業を終えているため、ルール違反ではない」などと主張しています。選管は事態を重く受け止め、11日に高市氏陣営を口頭で注意しましたが、ペナルティーなどはありませんでした。このリーフレットの効果もあったのではないでしょうか。

「高市さんへの懸念が…」

ーー結局、1回目の投票結果は、1位が181票で高市氏、2位が154票の石破氏で、決選投票前までは高市氏がかなり優勢だと見えました

 1回目の投票で、高市さんは旧安倍派の党員票を多く獲得できました。石破さんが得た国会議員票は46票、高市さんは72票でした。安倍さんの“お気に入り”だったということもあり、今回の総裁選でも「故・安倍晋三首相の継承者」の立場を確立していました。ところが決選投票となり、石破さんか高市さんかの二択となったとき、林(芳正)さんや進次郎さん、上川(陽子)さんらに入れていた議員は、「右すぎる」高市さんへの懸念があり、石破さんに票が流れたと見られます。特に、進次郎さんに入っていた票が石破さんへ流れたのが大きかったのではないでしょうか。

 また、高市さんは、夫婦別姓に慎重な考えを示しており、靖国神社参拝には賛成など、保守層からの支持を受けてきました。しかし、いまや多様性という言葉がキーワードとなり、新しい価値観を認めることが重要視されています。高市さんの考え方は、現在の世の中の流れに合わないと考えた議員が多くいたのではないでしょうか。

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古い価値観に異を感じた議員も