「女子学生は実習で生の現場を体験し、出産や子育てと仕事を両立できるのか、ワーク・ライフ・バランスの危惧を覚えたのだと思います」(内田教授)
学校は弱い立場
一方で教員にとって負担となる業務のトップが「保護者や地域住民からのクレーム対応」だった。弁護士の真下麻里子さんは、次のように話す。
「制服を見ればどこの学校かわかるので、生徒が問題を起こせばすぐに連絡がいく。学校は地域と良好な関係を築いていかねばなりませんから、クレームに対して先生は反論しにくい。学校はとても弱い立場にいます」
内田教授は、カギを握るのは保護者だという。
「先生が大変そうだと感じても、実態を知っているわけではありません。現状を伝えれば、なんとかしなければと思うはず。過度な要求も見直されるでしょう」
調査を行ったパーソル総合研究所の、上席主任研究員の井上亮太郎さんは次のように話す。
「60%以上が教員という職業に誇りを持っていると回答しています。業務の削減は必須の課題ですが一律に切ってしまっては、やる気を削ぐことになってしまう。時間だけでなく、中身を検証して慎重に進める必要がある」
さらに詳細な調査で、20代の若い教員と副校長・教頭が「はたらく不幸せ実感」の割合が高かった。
「若い教員は保護者対応や苦情に対する負担感が強い。また教頭・副校長は職務範囲が不明瞭で、他の教員に比べて業務時間が長いこともわかりました。この結果から、若手教員に対する支援、学校業務における役割分担のマネジメントが必要だと実感しました」(井上さん)
(ライター・柿崎明子)
※AERA 2024年9月30日号より抜粋