千葉県船橋市の塚田南小学校サポーターズクラブの呼びかけで集まった保護者が運動会の片づけを手伝った(写真:成瀬さん提供)
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 PTAに代わる新しい組織をつくる動きもある。子どものために行う活動の内容は大きくは変わらない。いったい何が違うのか。AERA 2024年9月30日号より。

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 プラスチック製の容器に盛られたブランド米「粒すけ」のご飯にイワシのチーズ春巻き、磯香和え、キムチ鍋ふうのみそ汁。デザートは味の濃い花みかん。保護者たちが食べているのは、子どもたちのこの日の給食と同じメニューだ。

 給食の試食会後は、子どもたちのクラスを訪ね、子どもたちが給仕する様子や、食事する様子を見守る。自宅とはまた違う、子どもたちの様子が見られると好評だ。

 2021年春に開校した千葉県・船橋市立塚田南小学校には、PTAがない。このイベントを主催するのはPTAではなく、保護者の会「塚田南小学校サポーターズクラブ」だ。

 この「サポーターズクラブ」を立ち上げた成瀬有さん(45)は言う。

「保護者と学校との間を取り持つ仕組みはあったほうがいい。でもそれは、教職員が参加するPTAでなくてもいいだろう、と考えていました」

 PTAは、保護者(Parents)と教職員(Teacher)がつくる組織(Association)だが、サポーターズクラブに参加するのは保護者のみ。入退会は自由で、会費はない。同校の保護者約1千世帯のうち、97%が入会する。本部メンバーは19人で、男女比はほぼ半々だという。

 塚田南小ができる前、成瀬さんは近隣の小学校でPTA会長を務めていた。成瀬さん自身、PTAには疑問があった。入退会自由のはずなのに、全保護者が平等に参加を求められる「負担感」の強い組織になってしまったと感じていた。さまざまな事情でPTA活動をできない保護者もいるのに、「あの人はズルい」「まだ役員、委員をやっていない人がいる」と陰口を叩かれることもある。

「おやじの会」スタイル

 参加者が無理なく活動でき、充実感も得られるようなボランティア組織にしたかった。

「新しい小学校につくる組織は、『おやじの会』のスタイルがいいと思っていた」(成瀬さん)

 おやじの会とは、父親たちが中心になって、子どもたちのために遊びやスポーツなどのイベントを開催する組織のことだ。PTAの傘下にあるものもあれば、地域の人が誰でも参加できるものもあり、全国に4千以上あるといわれる。やりたい人がやる、ボランティア活動という位置づけで、家庭や仕事の都合で参加できない人がいても気にしない。

成瀬有さん(なるせ・ゆう)/千葉県船橋市の小学校でPTA会長を務めた経験をもとに、新設校で「塚田南小学校サポーターズクラブ」を設立(写真:米倉昭仁)
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サポーターズクラブは保護者に何かを強いる組織ではありません