クレーム対応から書類作成までこなす学校の先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態だ。こうした混乱は教育の質ともつながり、保護者にとっても他人事ではない。現場での新たな取り組みを取材した。AERA 2024年9月30日号より。
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大阪のベッドタウンとして発展した奈良県生駒市にある中規模小学校では今年だけで、教員5人が退職、休職した。他学年の教員は授業準備などをするはずの空き時間に、担任が休んでいたクラスの授業に入った。
「担当の学年も教科も異なる教員がサポートに入りました。そうなると学びの連続性を保つことが難しくなって、『ちょっとわかりにくいところがある』という声が聞かれることもありました」(奥田隆史校長)
最終手段として教頭が担任を兼務して、水泳指導、個人面談も担当した。大西宏昌教頭は言う。
「朝からクラスに入って、教頭の仕事をするのは放課後の夕方以降でした」
現場の教職員の仕事量は増えて、働き方改革どころではない。ある教職員は言う。
「もともと教員の定数に余裕がないから、誰かが休んだら子どもたちへの対応は他の教職員が担うことになります。私たちもできる限り授業に入ってサポートしました。もっと定数に余裕があり多くの教員がいれば子どもたちも教員も安心して過ごせると思います」
学校とマッチング
待っていても、年度途中にフルタイムで働ける教員は来ない。そこで生駒市教育委員会が昨年度始めたのが、学校と非常勤教員との“マッチング”だ。市教委事務局主幹の杉山史哲さんは「非常勤なら働きたい先生は結構いるんです」と話す。
例えば、子育て中で学校現場を離れているけれど、週3日、子どもの帰りに間に合うように午後2時半に帰りたい「潜在教員」。また、学校現場を退職後に自宅近くの学校で働きたい人もいる。時短なら、近所なら、働きたい人はいるのだ。
「各自治体も講師登録の説明会を開いていますが生駒市では昨年度、学校で働きたい方に向けた就労相談会に来た103人の一人一人に40分から1時間程度の個人面談をして働きたい人の細かいニーズを聞くことに力を入れました。『こういう働き方だったらこの学校はどうですか』と丁寧にマッチングしました」