深夜さんのお気に入り変T。(右から)レゴを踏んでしまったムンクの「叫び」/シーツをかぶってお化けの真似/肺の中には水辺の風景(写真:深夜さん提供)

あえて着てる感

 変Tを着るということは、「その姿を見る側」にも心理的な影響を与える。日本服装心理学協会代表理事の久野梨沙さんは、服というものは着ることによってその人と一体化し、「服の評価=着ている人の評価」になる面があると言う。

「その人の外見にいろんな要素があったとしても、人はそのうちの『最も特徴的な一つ(中心的な特性)』しか頭に残らないという性質がある。変Tを着ると、『変わった人だな』と変Tが第一印象の中心的な特性になってしまう。たとえば『私は他人とは一味違う』と思われたくて変Tを着る人にとっては、自身を変えることなくその印象が手に入ることがメリットであり、快感でもあると思います」

 では、変Tを「うまく着こなす」にはどうすればいいのか。スタイリストでもある久野さん、「そもそも変Tを『おしゃれに』着たいかな」と笑いつつ、コツを伝授してくださった。キーワードは「あえて着てる感」だ。

「本人が気づかず間違えて変Tを着てると思われるのが、おしゃれという点では最もダメージが大きいですよね。『変Tだと、ちゃんとわかってるよ』を見せないといけない。そのためには、変T以外のアイテムにかなり気を使う必要があります」

 たとえば男性ならジャケットから少し変Tを覗かせる。女性ならきれいめなスカートにヒール、いい感じのアクセサリーもつけて、そこに変Tを合わせる。

「全身決め決めではなく『ハズし』にきてるんだなと見せるのが、変Tがいちばんおしゃれに見えるコツかなと思います」

 なるほど。ではアドバイスをもとに、皆で変Tを着て出歩こう──と言いたいところだが、ここで残念なお知らせがある。

「街で変Tを着ている人、そんなにいないのでは?」

 そう指摘するのは、共立女子短期大学教授の渡辺明日香さん。1994年から30年、原宿、渋谷、銀座でファッションの定点観測を続けてきた。

「毎月1回、週末に10代後半から30代くらいを観察対象として1度に1500人ほどの写真を収集、歩く人たちを観察しています。大胆なプリントやブランドのパロディーTシャツを見かけることもありますが、変Tを着ているのは1地点につき1人いるか、いないかくらいです」

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