ジャーナリスト/元米国駐在夫:小西一禎さん(52)(こにし・かずよし)/1972年、埼玉県出身。慶応義塾大学卒業。修士(政策学)。2017年、妻の米国赴任に伴い、会社の休職制度を男性で初めて活用。著書に『妻に稼がれる夫のジレンマ』など。2児の父(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

池田:女性にキャリアがあっても、男性の方が収入や社会的地位が高くあるべきだと男性性にしがみつく人と、男女問わず能力が高い人が評価されるべきだとフラットに考える人がしばらく拮抗するのかなと思います。

小西:そうですよね。駐夫時代に現地で知りあった一回り以上年下の男性は、私と同じく駐在員の妻に同行して来ていたのですが、素直に自然に妻のキャリアを応援し、尊敬していて。私は葛藤を抱きながら同行し、現地でも悩んだ身なので、若い世代の価値観に衝撃を覚えました。

池田:日本の男性中心社会は、戦後の日本経済の成長という成功体験とセットになっています。そのため、今も終身雇用と年功賃金で安定した仕事に就くことが人生の成功だと思っているところがある。しかし、男性も雇用と収入の安定にとらわれず、新しい人生の選択ができるようになれば、日本社会の発展にとってプラスになるはずです。研究者や専門職を目指して大学院に進学したり、ベンチャー企業など新興的なセクターに行くのも良いと思います。

会社の雰囲気も変わる

小西:仕事と家事育児を両立させる男性が増えれば、会社の雰囲気も自ずと変わる。それを受けて、会社も体制の見直しをせざるを得なくなり、結果的に長時間労働の是正につながると推測します。OECD(経済協力開発機構)によると、日本は無償労働時間比率における男女比が5.5倍の差があり、夫婦間の家事育児のアンバランスを物語っています。

 これまで私は「女性は出産や育児などのライフステージに直面した際、変化を余儀なくされる」といった内容を記事に書いてきたんですが、それはおかしいとこの対談に臨む際に反省しました。ライフステージの節目に男性も変わることで、新たな価値観を見いだしてほしい。その結果、働き方やキャリアの変革にもつながるのではと思います。

池田:そうですね。男性は、今一緒にいる女性は自分より優秀だと感じ、反対に女性は、一緒にいる男性が家事や子育てに向いていると感じ、それを良いと思えたら、その心の声に素直に従うことが大事です。その方が幸せになれると思います。

 もちろん伝統的な性別役割と摩擦が生じますので、労力をともないますし、覚悟が問われる面もあります。しかし、実は上の世代も古い価値観と闘ってきましたし、少しずつ社会は変わってきました。ですので、自分の心の声に従っていってほしいと思います。

(構成/フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年9月23日号より抜粋

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