小西一禎さん(左)と池田心豪さんはこの日が初対面。話題は互いの育った環境にも及び、大いに盛り上がった(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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 性別による役割の意識は根強いが、少しずつその意識は変化しつつある。性別ではなく個の能力が発揮できる多様な働き方の実現に必要なこととは。AERA 2024年9月23日号より。

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 職場や家庭に根強く残る「男性は仕事、女性は家庭」といった性別役割分業意識。正面から向き合っているジャーナリスト/元米国駐在夫の小西一禎さん(52)と、労働政策研究・研修機構 多様な働き方部門副統括研究員の池田心豪さん(50)という、同世代の2人が語り合った。

池田心豪(以下、池田):政府は男性育休や女性活躍を推奨し、新しい役割を男女に求めているけれど、今も男性が家計を支え、女性が家事・育児をするという古い役割から自由になっていません。仕事と家庭のケアの両方が男性にも女性にものしかかり「二重負担」が生じています。

 女性が仕事で活躍して収入が増える分、夫は家族を養う稼ぎ手役割から自由になって家事・育児をし、妻はその分家事・育児から自由になれたら良いですね。企業にとっても、男性の労働時間が短くなることで今まで男性に払っていた賃金を節約できますし、女性が今より働く分、要員を確保できます。1人で長時間労働をするより、2人で労働時間を分け合った方が健康面のリスクもなくなります。

小西一禎(以下、小西):本当にその通りですね。新たな視点をもらいました。

池田:日本人男性の働き方の見直しの議論は、既に何周目かです。我々団塊ジュニア世代は、家庭を顧みずに働く男性が過労死したり、定年退職後に居場所がなくなったりすることへの警鐘を聞きながら育ってきました。「自分はそうならない」という思いもあったと思います。

 でも、いざキャリアのエンジンをふかしていくと、男性的な組織の磁場は今なお強く、アクセルとブレーキを自由自在に踏み分けられるものではないんですね。

妻の収入が上になって

小西:おっしゃる通りですね。いざ現実を見ると仕事、家族、ローンが頭によぎって思考停止になる。でも、現状モデルでは立ち行かなくなってきている中、何か変わるきっかけを求めている人は少なからずいると思っています。妻の収入の方が上になったり、年下の上司ができたり、自分もしくはパートナーが病気になったりと、何かの変化をタイミングと捉えて一歩行動を起こす。それが水紋のように広がっていったらと思っています。

労働政策研究・研修機構 多様な働き方部門副統括研究員:池田心豪さん(50)(いけだ・しんごう)/1973年、東京都生まれ。博士(経営学)。著書『介護離職の構造 育児・介護休業法と両立支援ニーズ』は第46回労働関係図書優秀賞受賞。4児の父(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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