面談では売り上げといった数値的なものではなく、「人間としての成長」を見るという。
「僕たちも不完全なところはあるし、一歩間違えればパワハラになりうるという危機感は常に持っています。そこに思いやりや愛があったとしても、誰かの心に踏み込んで話すことはそうなる可能性も多分にある。だからこそ自覚的でなければと思っています」
強烈に心に刺さった
面談で伝えたことがすぐに改善されなくても、それをとがめることはない。「期待値をそこまで持っていないから」と片石さんは言うが、そうした「ゆとり」を持てるようになったのは、起業当時の苦い経験がある。
ともに起業した友人が会社を離脱し、新しく入った社員もすぐに退職してしまう。そんな負のスパイラルに陥ったとき、ある社員がふとこうこぼした。
「こんなに人が辞めるのって異常じゃない?」
片石さんを責めるような口調ではなかったが、強烈に心に刺さったという。
「努力していると報われるみたいな感じで、経営者って大変な状況に身を置いていると安心できるんです。来月会社の資金がショートするかもしれないというときに、楽しげな雰囲気でやるのってちょっと怖いというか。ただ、つらいことをつらくやるのってセンスないなと思って、あまり気負わずにやろうと変えてから社内の雰囲気もよくなりました」
そんな同社が目指すのは「自律分散型」の組織だ。環境の変化や目的達成に向けて、一人ひとりが自分で学び、突き進んでほしい。そんな思いがあるからこそ、「マネージャー」「マネジメント」という言葉を廃止し、プロデューサーと呼ぶことにもこだわる。
「みんな普通にマネジメントや管理職という言葉を使っていますが、けっこうヤバい言葉じゃないですか。人を管理するって、やっぱり失礼だと思うんです」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年9月23日号より抜粋