ヘンドリックスは、昨季世界選手権でショート首位に立って臨んだ記者会見で、坂本への敬意を口にしている。欧州選手権後は怪我のため充分に練習できなかったというフリーではミスが出て、総合4位となった。今季は万全の状態で臨み、ベテランならではの成熟した演技をみせてほしい。

 2010年バンクーバー五輪金メダリスト、キム・ヨナの影響で、韓国では優秀な女子スケーターが数多く育っている。2026年五輪代表選考も熾烈になりそうだが、昨季世界選手権で銅メダルを獲得した17歳のキム・チェヨンは、ミラノに一歩近づいたといえるのではないだろうか。

 キム・チェヨンがスケートを始めたのは11歳で、遅いスタートだったといえる。しかし、人より多くの練習を積むことで高いレベルに達したという。冷静な表情で静かな曲を表現するプログラムが多く、演技中は大人びた印象を与えるが、オフアイスの素顔にはあどけなさも残る。遅咲きの努力家は、五輪プレシーズンでさらに飛躍を遂げるかもしれない。

 また今季は、アリサ・リウ(アメリカ)が競技に復帰する。2022年北京五輪に出場し7位だったリウは、同年の世界選手権で銅メダルを獲得。そのシーズン終了後に引退を発表したが、今季はグランプリシリーズにエントリーした。高難度ジャンプを持つ天才少女として名を馳せたリウは、19歳になった今季、二度目の五輪出場に近づくのだろうか。

 世界中の女子スケーターが、今季からミラノを見据えて歩みを進める。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」

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