舞台「ボクの穴、彼の穴。W」の稽古風景。窪塚は言う。「戦争という題材ではあるけれど、すごく現代的な要素が詰め込まれている。いまの時代を生きる若い世代にも響くところがあると思います」(写真/植田真紗美)

指揮で変顔をし続けクラスの順位を最下位に

 人の懐に自然に入り込むような人懐っこさは子どものころからだと、ラッパーのケン・フランシス(21)はいう。小4からの友人で中学時代も一緒につるみ、窪塚のやんちゃな一面を知る一人だ。そもそも仲良くなったきっかけが可笑(おか)しい。

「たまたま一緒になった帰り道で『好きな子教えて?』って、かなりしつこめに聞かれたんです。いなかったけど強いていうならこの子かな、という名前を『絶対、言わへん』って約束で教えたら、次の日には全員が知っていた。ほんまにこいつ許さへん!と思いました(笑)」

 修学旅行中、「お菓子は禁止」と言われたバスの車内で「フエ(笛)ラムネ」をピーピー吹いて翌朝みんなの前で反省させられたり、合唱コンクールの指揮者をやったときには全員に向かって変顔をし続けて、クラスの順位を最下位にしたり。愉快かつ優しさのにじむエピソードが山ほどある。

「この間も自分の誕生日にいきなり『下に降りてきて』って。行ったら東京からわざわざ大阪にプレゼントを持ってきてくれていた。びっくりしましたね。サプライズ好きなんですよね」

 やはり環境の影響か、窪塚は子どものころから息をするように漠然と「俳優になりたい、なるかもしれない」と思ってきたと言う。その姿を最初にカメラに収めたのは映画監督の豊田利晃(55)だ。2015年、移住先の小笠原諸島に親交のあった窪塚洋介を呼んで映画「プラネティスト」を撮った際、小5の窪塚が父に連れられてやってきた。

「ドキュメンタリーだから脚本もないんだけど、愛流はいい動きをするんですよ。いいところでいいことを言ってくれたり。『勘がいいな、この子は』と思った」

 窪塚も当時を憶えている。

「僕が目立ちたがり屋だっていうこともあるのですが、普通に歩いているシーンで僕がジャケットを脱いで父親に渡すとそれだけですごく家族っぽい絵になるな、とか、無意識に動いていました」

 2年後、豊田は映画「泣き虫しょったんの奇跡」で主演の松田龍平の少年時代役に窪塚を抜擢(ばってき)する。実在の棋士・瀬川晶司の半生を描いた作品。窪塚は瀬川の指し方の癖を憶えるために、授業中ずっと消しゴムで駒を置く練習をした。それでも現場で「ボロボロになった」と振り返る。

「手は震えるわ声は震えるわセリフは飛ぶわ、歩くシーンでは右足と右手が一緒になっちゃって」

 最大の難関は親友との対局に負けてトイレで泣くシーンだった。「泣け」と粘る豊田を前にどうしても泣けず、結局ハッカを塗って涙を流した。

「終わって『お前、まだまだだな』みたいなことを言ったとたん、愛流がその場で泣きだしたんです。『それ、本番中にやれよ』って(笑)。そのあとずっと泣いていました。よっぽど悔しかったんでしょうね」(豊田)

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「俳優になりたい」と告げ 父からは一言「なめんな」