「私立校と戦うことで自分たちの弱点が明確にわかる。その積み重ねでレベルアップできたのではないか。県内の私立校と切磋琢磨してきた結果が、今回のような躍進を生み出したのではないかと思う」(山根氏)
「越境留学して野球に打ち込む選手は覚悟が違う。それに負けまいと必死にやり続けた結果だと思う。大社に次ぐ公立校がどんどん現れ、島根野球の底上げに繋がって欲しい」(樋野氏)
大社は準々決勝で神村学園(鹿児島)に敗れるも、93年ぶりのベスト8入りという快挙を成し遂げた。試合後の石飛監督は「野球部の歴史が動いた。今後100年のスタートだ」と語った。
「島根大会の決勝戦前、過去の県大会準優勝盾を選手に見せて『もう銀色はいらないよな』と語りかけた。その後は甲子園出場どころか、ベスト8という結果まで残した。満足してもおかしくないのに、既に次を見据えているのが石飛監督らしい」(山根氏)
チームの結果とともに、アルプス席を埋めた紫軍団の熱狂的かつ紳士的な振る舞いは称賛された。「神々の国からやって来た少年たちの快進撃は、100年の甲子園でまだ続きます」(8月17日、早稲田実業戦)という名実況も生み出した。
今夏の大社フィーバーは全国を巻き込み、大きな盛り上がりを見せた。甲子園所在地の西宮が、季節外れの「神在月(かみありづき)」を迎えていたかのようだった。しかしそれらは過ぎ去ったこととして、大社は次の100年へ向けて動き出している。(文・山岡則夫)
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