しかし、結末には江國氏の言葉がリフレインされるようだと、神崎さんは言う。

ドラマ『東京タワー』で描かれた透のような経験の少ない若い世代は、“恋愛の延長線に結婚がある”と信じ、誰もがそう願う。一方、詩史は年齢を重ね、経験も積んで恋愛と結婚は相容れないものだと気づく。

 ドラマ『東京タワー』の詩史と喜美子(MEGUMI)は若い男性と恋に落ちるが、恋愛で求めるものと結婚に求めるものは違い、経験者はそれを選別できる。だからこそ、結婚していながらも新しい恋に出会うと自分の結婚生活を維持しながらその恋を保とうとする。恋をしても今のパートナーと離婚しないのは、恋をしてもその相手と結婚しないのは、恋は永遠に続かないことを知っているから。結婚したがらないのは恋が永遠に続かないことを知っているから。恋は色褪せ、朽ちる」
 

 そういった点では、恋愛ドラマの印象が薄い板谷由夏や最近では母親役をこなすMEGUMIが、「恋愛の甘やかさ」「残酷さ」そして「人生と相容れない」を演じ切っていた。
 

永瀬廉がささやく名セリフ

 一方、若い恋人役の永瀬は、ひたすら恋に真っ直ぐだった。神崎さんは心に残る小島透のセリフがあると言う。

「今回のドラマでは、恋に真っ直ぐな気持ちを永瀬廉さんのモノローグで表現されていました。ドラマ中のBGM美しいピアノの旋律とともに永瀬廉さんの声で彼女へのひたむきさを語る名セリフがいっぱい散りばめられていたのが見どころ。

 その中で、『幸せかどうかはそう重要じゃない。詩史さんに与えられる不幸なら他のどんな幸せよりもずっと価値がある』には、まいった(笑)。永瀬廉さんファンでなくとも、こんなふうに想われたらキュン死寸前ですよね」
 

 2001年に刊行された『東京タワー』が、20年以上の時を経てドラマ化されたわけだが、恋愛事情専門家・恋愛コラムニストとして神崎さんはこう締めくくる。

「令和版のドラマ『東京タワー』だったわけですが、演じている女優さんが誰であろうと、また登場人物の背景が違えど、主人公の小島透と恋に落ちる女性の気持ちは令和だろうが平成だろうが変わらない。

 女は自分にいっときの夢を見させてくれる男に酔いしれてしまう。そして恋をしながらも“一緒に住むことと一緒に生きることは違う”というずる賢い既婚者の気持ちも。『恋愛の持つ甘やかさ、残酷さは、人生と相容れない』。それは、時代によってなんら変わらない」

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