18年にセ・リーグ最優秀新人賞を獲得した東(左)とパ・リーグ最優秀新人賞の楽天・田中和基

左肘を手術し、勝てない時期も

 順風満帆な野球人生だったわけではない。立命館大から17年のドラフト1位でDeNAに入団。新人の18年にいきなりチームトップの11勝をマークして新人王を受賞したが、その後は左肘の故障に悩まされる。19年は4勝に終わり、20年はトミー・ジョン手術を受けて1軍登板なし。21年もリハビリ期間が長く、10月に実戦復帰して729日ぶりの白星を飾ったが、翌22年は開幕投手を務めながら1勝に終わった。能力の高さは誰もが認めるが、試合で発揮できない。本人ももどかしさを抱えていただろう。そして昨年、大輪の花を咲かせた。

「復活したという言葉はちょっと違うかなと。新人王を受賞した時より、直球のキレが増して制球力が格段に上がっている。手術して3年が経ち自分のイメージしたとおりに体が扱える感覚になったのでしょう。バッテリーを組み、東の良さを引き出している山本祐大の存在も大きい。ピンチの場面で内角を果敢に突けるのは、制球力に絶対的な自信があるから。相手球団のマークが厳しくなった今年も複数の投手タイトルを狙える好成績を残している。この実力は本物と言っていいでしょう」(スポーツ紙デスク)

 今年もリーグ2位の146イニングを投げて21与四球と少ない。どの球種でもストライクが取れるため四球で崩れる心配がない。スタミナ十分で試合終盤になっても球の精度が落ちないことも魅力だ。

 安定感を物語る数値がある。昨年8月4日の阪神戦(横浜)から、30試合連続クオリティスタート(QS、先発投手が6回以上投げて3自責点以内)を継続している。今年、規定投球回数に達した両リーグの投手でQS率100%を維持しているのは東だけ。シーズン通してQS率100%を達成すれば、13年の田中将大楽天)以来、史上2人目の快挙となる。

 メジャーを取材するフリーライターはこう語る。

「東海岸のチームの編成担当が『今永昇太(カブス)を昨年視察に行ったけど、東も能力が高い左腕だ。昨年まで見る機会が少なかったので知らなかったよ』と驚いていました。今永の今年の活躍で、日本人左腕の注目度がさらに上がっています。実際に東をチェックするメジャーの球団が増えている」

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今永のようにメジャーに行くのか?