
センターからのダイレクト返球を、遊撃手の市川は「あそこは勝負。飛田が投げた瞬間、ドンビシャだなと思った」と振り返る。
ストライクボールだ!
そう思う一方で、ノーバウンドで向かってくる返球に捕手の熊谷は少しだけ驚いた。
「基本は内野へ繋いでバックホーム。飛田もいつもは低く投げるんですけど……。だから、ノーバウンドで来た時はちょっとビックリしました。でも、素晴らしい送球でした」
右の拳に力を込めた球審が「アウト」のコールをすると、甲子園球場は歓声とため息に包まれた。

2年連続で準決勝敗退となった神村学園の小田大介監督は、9回表にあった攻守のせめぎ合いをこう振り返るのだ。
「ウチはしっかりと打ちましたし、関東第一さんは(センターから)投げ切った。お互いに、いいプレーだったと思います。あそこはワンヒットで走者がホームに還るところ。最後も練習通り、選手たちは力を発揮してくれました。でも、それを相手の守備に防がれた。関東第一さんのほうが一枚上手でした」
神村学園にしてみれば、7回裏の2失点に直結した2失策が痛い。対して無失策だった関東第一は、最後もチームの色である「守り勝つ野球」を体現して、夏は初となる決勝進出を決めた。

(佐々木 亨)
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