第69回青少年読書感想文全国コンクール表彰式で話す秋篠宮妃紀子さま=2024年2月2日午後1時26分、東京都千代田区、代表撮影

 山田理事は、「そもそも多くの先生は読書感想文を『評価すべき対象』とはとらえていない」と指摘する。読書感想文を評価するには、前提として、「どのように読書感想文を書くか」を子どもたちに教える「事前指導」を行わなければならない。

「書き方を指導せずに読書感想文を課題として出して、提出されたものを評価することはできません。読書感想文で子どもたちに『書き方を身につけさせよう』という意識を持つ教員はとても少ないでしょう」

AIに頼るのは当たり前

 学校教育法に基づいて各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めた「学習指導要領」には、読書感想文についての指導は明記されていない。

「書くこと」において、「事象と感想、意見などとを区別するとともに、目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること」を指導することが書かれているのみだ。

 ゆえに、学校で定める教育課程にも通常特段の記述もなく、書き方を指導する時間も設けない。

「ところが、夏休みになると、『読書感想文』が課せられる。書き方の指導がないものが課題になれば、途方に暮れる子どもが出てくる。生成AIの助けを借りようとするのはある意味、当たり前でしょう」

感想文「応募数」を確保したい

 ではなぜ、「読書感想文」は課題として慣習化しているのか。

 山田理事は背景として、さまざまな「読書感想文コンクール」の存在を指摘する。たとえば、「青少年読書感想文全国コンクール」の場合、昨年度は全国2万3832校(海外日本人学校含む)から、265万4235編の応募があった。

 同コンクールではまず、学校内で選抜があり、次に地区の選考会に進む。

「選考会のトップは地元の校長が務めることもあり、その学校で応募数が揃わない事態を避けようと考える場合もあるようです」

 ちなみに、生成AIの使用はコンクールの規約で禁止されていることが多く、このコンクールでも問題視された。昨年度、学校が作品を地区選考会に推薦する段階で、本人以外が書いたと思われる文章が複数見つかった。確認すると、「生成AIを使った」と認めたものが10編以上あり、「応募要項違反」として審査の対象から外された。

 同コンクールの地区選考会に進む際の対策として、「生成AIの不適切な利用や盗作等の不正行為をしていない」と書かれた誓約書に児童と保護者に署名させ、校長に提出させる自治体も現れた。

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AIが読書感想文のヒントに