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 仕事の場で「方言」をあえて使う人がいる。方言もうまく使えば、仕事にプラスになるケースがあるようだ。成功体験と専門家の見解を紹介する。AERA 2024年8月12日-19日合併号より。

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 アエラでは今回、「仕事と方言」についてアンケートを実施した。そこでは「非関西出身者の上司は『ほんまや』『〇〇やん』という言葉を会話でもチャットでも乱発する。そのカジュアルさがほどよい距離感・信頼感を生んでいると感じる」(女性、会社員)、「九州のお取引先の女性若手社員さんが、地方の言葉全開で商談をされましたけど、かえって好印象でした」(兵庫県、50歳男性、卸売・小売業)、「互いの出身地など仕事とは関係ない雑談に花が咲く」(広島県、60歳男性、リース)など、肯定的な声も多かった。

沖縄の人に青森弁で

 青森県出身で現在は東京で出版関係の仕事をしている42歳の女性は、ふだん青森弁が出ることはまったくないという。

「高校を出て東京の大学に入った時点で、すんなりと標準語に移行できました。青森弁と標準語ではモードが違いすぎたのか、逆にそこは簡単でしたね」

 あるとき、雑誌の企画で沖縄に行く機会があった。現地で出会う市井の人たちが「米軍基地についてどう感じているか」をリサーチする仕事だった。

 デリケートなテーマ。でも本音を引き出さなければならない。奮闘する中で、女性はいつもの「標準語の敬語」ではなく、青森弁を交えて沖縄の人に語りかけている自分に気がついた。

「『どごらへんに住んでるんですか?』とか、そんな調子です。自分でも驚きました。同時に沖縄弁と青森弁はどことなく似てるな、とも思ったんです」

 女性に言わせると、トーンや間合い、話すペースがゆったりしているところが、二つの言葉はよく似ているという。

「テーマがテーマですし、東京から来た私が理路整然と『基地のメリットは?』などとただ聞いてもうまくいかない。日常会話の延長のような感じの青森弁で問いかけた方が、方言同士、向こうもたくさん話してくれるなという手応えがありました」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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