人口減少が続く中、全国の自治体でも数少ない「100年後も消滅しない町」が埼玉県にあるという。さぞ活気にあふれているのだろうと町を訪ねてみると、2002年にできたという駅の前にはコンビニすらなく人通りもない……。一見すると、なぜこの町が「100年後も消滅しない」と評価されるのかピンとこなかったが、行政や移住してきた住民に話を聞くと、住んでみないとわからない“意外な魅力”があった。
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埼玉県のほぼ中央に位置する滑川(なめがわ)町。
平日の昼下がり。東京・池袋から東武東上線の急行列車に揺られること約1時間。2002年に開業したという同町の「つきのわ駅」に降り立つと、駅前にはコンビニすらなかった。
人通りはないに等しく、活気が感じられない。駅舎内から見渡すと、のっぺりとした駅前のはるか遠くに、秩父の山々が見える。
過疎ってるなあ……。
思わず心の中でつぶやいてしまったが、町の6割が丘陵地で、北部にはのどかな農村地帯が広がっているこの土地を何も知らずに訪れた人は、そう感じても仕方がないだろう。町内にはもう一つの「森林公園駅」があるが、こちらも駅前には、ほぼなにもない。熊谷市にまたがる「国営武蔵丘陵森林公園」は知られているが、町内に目立った観光スポットや施設はない。そう、思い切った表現をしてしまえば「何もない町」なのだ。
だが、そんな町の外見とは裏腹に、00年に1万2836人だった町の人口は増加の一途をたどり、24年8月1日現在で1万9731人と5割以上増えた。中でも子育て世帯が6割以上増加しているのが特徴的だ。
民間の有識者で作る「人口戦略会議」の4月の報告では、滑川町は50年時点で若年女性の人口減少率が20%未満にとどまると予測される「自立持続可能性自治体」と判定された。全国で65自治体だけだ。
さらに、滑川町は「50年まで若年女性が増え続ける」と予測された、全国に8つしかない自治体の一つになった。その顔ぶれをみるとブランド力の高い東京都港区や中央区、つくばエクスプレスの開通に伴うマンションの開発ラッシュで人口が急増した千葉県流山市など、なるほどという自治体が並ぶ。その中で、滑川町は増加率で6位につけた。