「つきのわ駅」の南口駅前の風景(撮影/國府田英之)

「何もない」からこそ疲れない

 友達もいない中で始まった子育て。予約の要らない施設が多く、気持ちが煮詰まったときにふらっと立ち寄りやすい。通ううちに同年代のママ友が増え、同じ福島出身の女性とも知り合えた。

「子どもの遊び場としてだけではなく、今は自分自身のために通っています」と千島さんは笑う。不安を解消できる居場所が、町にはあった。

 町内の新しい住宅地に17年に引っ越してきた早川愛子さん(39)。2児の母で、近くの学童に子どもを預けている。

 大宮市(現さいたま市)出身の早川さんは、同じ県内にいながら滑川町という名前すら知らなかった。

「夫の会社の先輩が、子育てにいいらしいよと教えてくれて、初めて足を運んだんです」

 当時、長女が肌が弱く、風邪もよくひくため、頻繁に病院に通っていた。自然豊かな環境で育てたいと考え始めていたころに滑川町に出会い、子育て支援の充実ぶりに移住を即決した。

「実際に住んで子育てをしてみると、助かるなあって思います。医療費も、他の町ならどれだけかかっていたか。周りもお子さんが3人以上いる子だくさんの家庭が多いのですが、安心して生み育てる環境が整っていると感じています」

 とはいえ、いくら子育て支援が手厚くとも、出かけるにも買い物にも車は必須。駅に車を駐車して、電車通勤する人も少なくない。前述のようにつきのわ駅前にはコンビニもない。不便さや退屈さは感じないのか。

 だが、移住した人たちが口にするのは、住んでみないとわからない“意外な魅力”だった。

 前出の千島さんは、「何もない町だねってよく言われるんですが、それが逆に魅力なんです。何もないからこそ、疲れません。自然が多くて、のびのび子育てができています」と話す。

 都市部で育った早川さんも「お店が少ないなって最初は感じましたけど、不便っていうほどのことはありません。渋滞もないし、夜はとても静かで星もきれいだし、都会にいたころよりおおらかに暮らせていますね」

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町も派手な宣伝は一切しない